研究領域 | マトリョーシカ型進化原理 |
研究課題/領域番号 |
24117522
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研究機関 | 大阪大谷大学 |
研究代表者 |
見坂 武彦 大阪大谷大学, 薬学部, 講師 (80397661)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 遺伝子伝播 / 細菌 / アメーバ / 進化 |
研究実績の概要 |
ゲノム解析の進展に伴い、細菌はファージや単細胞・多細胞真核生物など多様な生物との間で遺伝子伝播を行ってきたことが示された。そして寄生・共生関係の進化の過程において、宿主と寄生体間の遺伝子の伝播とその多様化が重要な役割を果たしていることが認識されてきた。これらの異種微生物間の遺伝子伝播は、ゲノム解析によりその痕跡が確認されているが、実験的にどの程度の頻度で起こるかは方法論的制約により未解明のままである。 本研究では、異種微生物間の遺伝子伝播のモデルとして、アメーバと環境中の細胞寄生細菌を用い、原生生物と細菌間のDNA分子のフローをシングルセルレベルで可視化するための技術開発・改良を行う。次に環境試料を含むマイクロコズムを作製し、寄生関係にある原生生物と未培養の細菌との間の遺伝子伝播をシングルセルレベルで解析し、DNA分子フローの視点から寄生機構の解明を進める。 平成24年度は、寄生関係にある原生生物と細菌間の遺伝子伝播をシングルセルレベルで可視化するために、DNA分子を取り込んだ細菌を可視化する技術の開発を行った。遺伝子獲得と種の同時解析のために、細菌のrRNAを標的としたFISH法と細胞内遺伝子増幅法を併用できる手法について、プロトコルを検討し、一部の細菌で適用可能であることを確認した。 次にアメーバと寄生細菌間の遺伝子伝播実験に必要な供与体の作製を試みた。既存の広宿主域プラスミドベクターをベースにプラスミド複製開始部位をアメーバ用に改変し、gfp遺伝子を組み込んで、大腸菌でクローニングした。 また水環境からアメーバ寄生細菌を複数分離し、16S rRNAの塩基配列をもとに種を確認した。次年度のマイクロコズムでの遺伝子伝播実験に必要な試料の作製を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は以下の内容を達成できた。 ①遺伝子獲得と種の同時解析のために、細菌のrRNAを標的としたFISH法と細胞内遺伝子増幅法を併用できる手法について、プロトコルを検討し、一部の細菌で適用可能であることを確認した。 ②マイクロコズムでの遺伝子伝播実験に必要なアメーバ寄生細菌を複数分離し、種を確認した。 ③アメーバと寄生細菌間の遺伝子伝播実験に必要な供与体の作製を試みたが、作製途中であり次年度のマイクロコズムでの実験に直ちに用いるまでの段階には至らなかった。現在継続中である。
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今後の研究の推進方策 |
水環境試料にアカントアメーバを添加したマイクロコズムを作製し、添加したアメーバと水環境のアメーバ寄生細菌との間のDNA分子の移行頻度を、新手法を用いてシングルセルレベルで定量的に解析し、既存の方法(培養、GFP発現)で求めた遺伝子伝播頻度と比較する。 次年度に続き、アメーバと寄生細菌間の遺伝子伝播実験に必要な供与体を作製する。両者で複製される遺伝子組換えプラスミドを細胞に導入した後、EdUまたはBrdUで供与体のゲノムを標識する。マイクロコズムにおいて、経時的に以下の検討を行う。 ①アメーバ由来のgfp遺伝子DNAを取込んだ細菌の頻度:細胞内遺伝子増幅法により求める。②アメーバ由来のEdu標識DNA分子を取り込んだ細菌の頻度:アジ化蛍光色素を反応させて、蛍光顕微鏡下で、細菌細胞内のEdu標識遺伝子を可視化する。 ③アメーバ由来のgfp遺伝子を発現する細菌の頻度:GFP発現細菌を蛍光顕微鏡法で求める。④アメーバ由来のgfp遺伝子を発現し増殖する細菌の頻度と同定:抗生物質を含む選択培地で、GFPを発現しているコロニーを計数し、rRNA遺伝子の塩基配列を決定する。⑤アメーバ由来のBrdU標識DNA分子を取り込んだ細菌の同定:細菌画分のDNAを抽出し、BrdU抗体-ビオチン-ストレプトアビジン-磁気ビーズの系からBrdUを取り込んだDNAを回収し、rRNA遺伝子の塩基配列を決定しその細菌を同定する。⑥アメーバ由来のDNA取り込み細菌の同定:④と⑤の結果をもとにrRNAプローブを設計する。FISHと細胞内遺伝子増幅併用法、EdU-, BrdU-FISH法により、①②の種を確認する。 遺伝子伝播が起こりやすい種やその遺伝子配列の特徴、移行後の遺伝子の保持などから、異種微生物間の寄生機構と遺伝子伝播との関係を検討する。
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