研究領域 | マトリョーシカ型進化原理 |
研究課題/領域番号 |
24117524
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
福田 真嗣 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科, 特任准教授 (80435677)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 腸内細菌 / ビフィズス菌 / 相互作用 / 腸内環境 / メタボローム / オミクス / 大腸菌 / 微生物社会 |
研究実績の概要 |
海洋や土壌など、地球上のあらゆる環境中には多種多様な微生物共生社会が形成されており、環境生態系を維持している。われわれヒトを含む哺乳類全般も例外ではなく、その消化管内には1,000種類以上で100兆個にもおよぶ細菌群が生息しており、これらの細菌群が複雑に相互作用しながら腸内微生物社会を形成している。バランスのとれた腸内微生物社会はヒトの健康維持・増進に有用であることが知られているが、何らかの要因によりそのバランスが崩れてしまうと、いわゆる悪玉菌と呼ばれる有害菌が増加し、宿主にとって有害な腸内発酵(腐敗)を生じることで、大腸癌や炎症性腸疾患、さらにはアレルギーなどの疾患が誘発される。その一方で、ビフィズス菌や乳酸菌に代表される善玉菌そのものを摂取することで、バランスの崩れた腸内微生物社会を改善し、疾患の改善や予防を行うセルフメディケーションの重要性も示唆されている。したがって、腸内微生物社会がわれわれの健康と密接にかかわっていることは明白であるが、個々の腸内細菌がどのように作用することで、腸管内における複雑な共生微生物社会を形成しているのか、すなわち腸内微生物社会形成機構の分子メカニズムは不明であった。 本年度は、微生物社会形成機構においてその初期状態を構築する細菌群である大腸菌とビフィズス菌の2者間の相互作用の詳細について明らかにすることを目的とし、まずは大腸菌およびビフィズス菌のそれぞれについて、in vitroおよび無菌マウスを用いたin vivoでの解析を実施した。核磁気共鳴装置(NMR)を用いたメタボローム解析結果から、大腸菌およびビフィズス菌定着マウスの糞便から、それぞれの細菌に特徴的な代謝産物が検出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は研究計画書の実施計画に沿って、代表的な腸内細菌であり腸内微生物社会の初期状態を構成する大腸菌およびビフィズス菌について、in vitroおよび無菌マウスを用いたin vivoでの解析を行った。NMRを用いたメタボローム解析は実施したが、次世代シーケンサーを用いた細菌群の発現遺伝子群の網羅的解析については、現在進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の方針は、当初の研究計画書通りに無菌マウスに腸内細菌をいくつか定着させたノトバイオートマウスを作製し、in vivoでの細菌間相互作用について統合オミクス解析を実施する。得られた各階層の網羅的情報を統計科学的に解析し、腸内微生物社会の初期状態の理解を目指す。
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