研究領域 | マトリョーシカ型進化原理 |
研究課題/領域番号 |
24117527
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研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
瀧下 清貴 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋・極限環境生物圏領域, 主任研究員 (90392951)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 細胞内共生 |
研究実績の概要 |
鹿児島県の甑島に貝池という砂州によって海から遮られた湖が存在する。密度の大きい海水が流入し滞留することにより,年間を通して全層循環が起こらない,いわゆる部分循環湖であり,密度躍層以深では還元的な環境になっている。その酸化還元境界層にはChromatiumと呼ばれる紅色硫黄細菌が密集したバクテリアプレートが存在する。このバクテリアプレートを採取して,光合成細菌(紅色硫黄細菌)を起源とする共生体を持った原生生物の探索および分離培養を試みた。顕微鏡観察の結果,複数種の繊毛虫類において,その細胞内に紅色硫黄細菌が特異的に存在することが確認された。しかし,その紅色硫黄細菌が補食されたものなのか,共生しているものなのか現段階では判断が困難である。また紅色硫黄細菌培養用の培地を用いて分離培養を行ったが,特定の原生生物を増殖させることは出来ていない。 相模湾初島沖の水深約850mおよび1200mの海底にはメタン湧出域が存在し,そこには化学合成独立栄養細菌を一次生産者とする化学合成生態系が形成されている。現場の底泥には高濃度のメタンおよび硫化水素が含まれており,メタン酸化細菌や硫黄酸化細菌が豊富に存在している。海洋研究開発機構が所有する無人探査ロボット「ハイパードルフィン」を用いて,この底泥を採取し,メタン酸化細菌および硫黄酸化細菌を起源とする共生体を持った原生生物の分離培養を試みた。しかし,現段階では特定の原生生物を増殖させることは出来ていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本課題申請時当初に維持していた,メタン酸化細菌用培地で特異的に増殖する新奇原生生物株が絶えてしまったため,現在,目的とする新奇共生様式を持つ原生生物の探索を進めている状況にある。その目的とする原生生物の存在は貝池サンプルの顕微鏡観察等から強く示唆されているが,分離培養までは至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
目的とする新奇共生様式を持つ原生生物を分離培養するための培養条件を再検討する。例えば,紅色硫黄細菌,メタン酸化細菌,硫黄酸化細菌用の培地に,ビタミンや微量元素等の添加を行い,培養を試みる。 目的とする原生生物ではないが,本研究課題でのサンプリングにおいて,進化的に興味深い新奇な嫌気性原生生物も単離されている。発現遺伝子の網羅的解析によって,該当原生生物における代謝機構の解明も同時に進める予定である。
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