自然免疫は宿主の生体防御に必須であるだけでなく、その過剰な応答は自己免疫疾患などを引き起こす。自然免疫は微生物の構成成分を認識する。ウイルス由来の二重鎖RNAや宿主の分解途中のRNAが細胞質内に存在すると、RIG-I等のセンサー分子を活性化し、I型インターフェロンや炎症性サイトカインの産生を促し炎症を誘導する。我々はこれまで、RIG-Iの活性化に関与する分子としてDDX60分子を新規に同定しその機能を試験管内の解析により解明した。また、細胞質内のDNA認識センサーの候補分子としてLupleと名付けた新規分子を単離した。そこで、我々は核酸による自然炎症誘導の新たなメカニズムの解明するために、このDDX60分子とLuple分子に着目し解析を進めた。 DDX60ノックアウトマウスよりマウス胎児由来樹状細胞、腹腔内マクロファージ、脾臓由来樹状細胞等を単離し、polyI:C等の二重鎖RNA刺激や、牛水泡性口内炎ウイルス、センダイウイルスなどの感染により発現誘導されるI型インターフェロンと炎症性サイトカインの産生を比較検討し、DDX60の役割を解明した。また、マウス個体へのウイルス感染実験を行い、ウイルス感染後のサイトカイン産生と生存率を比較し、DDX60の生体内での役割を解明した。 Luple分子の生体内での役割を解明するために、マウスや小動物モデルのツパイを用い、核酸刺激やHSV-1感染後のLupleの発現を調べたところ、DNAに依存してLupleの発現が上昇することを確認した。また、最近開発されたCRISPRシステムを用い、Luple遺伝子を破壊することで、その役割を解明した。
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