研究領域 | 内因性リガンドによって誘導される「自然炎症」の分子基盤とその破綻 |
研究課題/領域番号 |
24117704
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊庭 英夫 東京大学, 医科学研究所, 教授 (60111449)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 内在性NF-κB / SWI/SNF 複合体 / miRNA / 制御ネットワーク / 上皮細胞 / アダプタータンパク質 / d4ファミリータンパク質 |
研究実績の概要 |
NF-κBが標的とする遺伝子群は細胞種特異的に、また内在性、外来性の刺激に依存してその発現が決定されていて免疫応答や炎症反応において決定的な役割を果たす。本研究では癌化した上皮細胞中で basal levelに発現される高レベルのNF-κBの活性に注目してこれを自然炎症のホメオタシスの破綻のモデル系として使用する。そして内在性NF-κBの活性がどのように決定されるのかを追求して、自然炎症の分子基盤を明らかにすることを目的とする。 1.これまでに解析した30種のヒト上皮・正常癌細胞株が、Type1細胞[Egr-1(+)/ miR-199a(+)/ Brm (-)] と Type2細胞[Egr-1(-)/ miR-199a(-)/ Brm(+)]の2群に分かれる事、またそれは転写制御因子(Egr-1)、それにより転写を活性化されるmiRNA遺伝子(miR-199a) 及びそのmiRNAの標的となっているBrm 型SWI/SNF 複合体間で形成されるdouble-negative feed back機構によって安定に維持されることを示した。Type1の群ではBrm型 SWI/SNF 複合体が完備しているために内在性のNF-κBやAP-1 の活性が高く、IL-6, IL-8, RANTES, 等の炎症性サイトカインやケモカインを高発現する原因となっていて、この群の細胞株が慢性炎症の状態にあることが示唆された。 2.我々は各種NF-κB ダイマーをこの複合体と連結して転写活性化を誘導する5種のアダプタータンパク質群を同定している。Type1細胞株をもちいて各種のKnockdown 実験を行なったところ、NF-κBの標的遺伝子群は、Brm 型SWI/SNF に依存して発現するものとそうでないものがあること、依存性の遺伝子群はその細胞内にあるアダプタータンパク質を必要とされることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は、正常上皮細胞株、MCF10A中で basal levelに発現されるNF-κBの活性を自然炎症のホメオタシスの対照とおいた。しかし予備実験によりMCF10A は、すでに間充織のmarker も発現していたのでその使用を控えて、がん細胞株間の比較研究に集中した。しかしこの変更のための研究の遅れはこの1年間で十分に回復した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究でBrm型SWI/SNF複合体とd4ファミリーアダプター群が多くのNF-κB標的遺伝子の高レベルでの発現維持に必要であり、これが慢性炎症の一因となっていることが示された。アダプター群を個別にknock downしても、その効果は限定的であることから25年度ではアダプター群を一括して失活するdominant negative変異体を開発して、内在性NF-κBの制御機構についてより詳細な解析の推進をめざす。
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