• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実績報告書

Small G proteinが制御する角膜炎発症機構の解明

公募研究

研究領域内因性リガンドによって誘導される「自然炎症」の分子基盤とその破綻
研究課題/領域番号 24117706
研究機関東京大学

研究代表者

齋藤 伸一郎  東京大学, 医科学研究所, 助教 (90361625)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワードTLR7 / plasmacytoid DC / SLE / Arl8b / 自己免疫病 / 角膜炎
研究実績の概要

我々は病原体のRNA成分を認識するTLR7の反応が生体内では通常抑制されていることを報告している。そして、自己のRNAにも反応してしまうTLR7に対する抑制が崩れるとTLR7は異常に活性化し、肝炎様症状を中心とした全身性炎症を引き起こすことを報告している。このTLR7の反応には、小胞体に存在するTLR7が反応の場であるエンドソーム・ライソソームに移行する必要がある。Unc93b1はTLR7に会合してTLR7をエンドソーム・ライソソームに運搬する分子である。運搬の機構を明らかにするため、Unc93b1に特異的に会合する分子を液体クロマトグラフイータンデム質量分析法にて解析し、ライソソームに局在してライソソームの移動と局在に関わるsmall G protein、 Arl8bを同定した。Arl8bはTLR7とUnc93b1の複合体に強く会合しており、TLR9とUnc93b1の複合体には殆ど会合していなかった。我々はArl8b欠損マウスを解析し、TLR7とTLR9を刺激することによりplasmacytoid DC(pDC)からインターフェロンalphaが殆ど産生されないことを明らかにした。さらに抗TLR7抗体、抗TLR9抗体を樹立して、pDCにおけるTLR7とTLR9の局在をコンフォーカル顕微鏡にて調べたところ、TLR7は刺激前からライソソームに存在していた。加えてTLR7とTLR9の局在は異なっていた。これらのことはTLR7が、刺激後反応の場であるライソソームに移行するというHiddie L.Ploeghらの 2008年Natureの論文とは異なっていた。さらに我々はプリスタン投与によって誘導される初期の腹膜炎、後期の自己抗体産生にArl8bが重要な役割を果たしていることを明らかにしている。これらのことは科学雑誌Cellに投稿してreviewされ、再投稿の準備中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究はArl8b欠損マウスにおいて認められる角膜炎の原因を明らかにすることを目的とした。はじめに自己免疫疾患の可能性が考えられたため、免疫担当細胞のT細胞やB細胞が関わっているのかどうかを検討するために、末梢のT細胞とB細胞を欠損しているRag2マウスと交配してArl8bとRag2の二つの遺伝子を欠損したマウスを作製した。その結果、12匹中2匹が角膜炎を起こした。したがって今のところ自己免疫疾患の可能性は低いのではないかと考えている。Arl8b欠損マウス由来の樹状細胞ではTLR7リガンドに対する炎症性サイトカインの産生量が正常樹状細胞に比べて10倍も高い。このことからTLR7が原因での角膜炎の発症を明らかにするために、Arl8bとTLR7の二つの遺伝子を欠損したマウスを作製中である。さらに樹状細胞が原因で角膜炎が発症しているのかを明らかにするために、Arl8bを樹状細胞でだけで欠損させるマウスを作製中である。もう一つの可能性としてArl8b欠損マウスにおいて発症する角膜炎の原因が、角膜の修復異常によるものなのかを検討する実験を進める予定であるができていない。理由としては、ただ今科学雑誌Cellに再投稿予定の論文を作成中であり、Arl8b欠損マウスを角膜修復実験に使用する余裕がない状態である。しかし、この論文の投稿は全身性エリトマトーデスなどの自己免疫疾患の治療に関わるものであると考えており、医学の進歩に貢献できる。したがって、論文作成を優先順位の高いことと考えている。以上のことより、本研究課題の当初の研究目的の達成度は60%位であるが、当初の研究目的とは異なるものの医学の進歩に貢献できる仕事を進めている。

今後の研究の推進方策

今までPlasmacytoid DCによるインターフェロンalpha産生にArl8bが重要な役割を果たすということを検討してきた。これからは、角膜炎の研究を進めるが、全身性エリトマトーデスとのかかわりをより詳しく検討する。MRL-lprマウスモデルやBXSB-Yaaマウスモデルなど全身性エリトマトーデスのモデルマウスを用いて検討する。既にMRL-lprバックグラウンドのArk8b欠損マウスは作製できており、マウスの数を増やして解析するだけとなっている。プリスタン投与における自己免疫性腎炎の発症に関してはC57BL/6マウスを用いて行い、野生型マウスにて抗自己抗体である抗核酸抗体が認められた。しかし、Ark8b欠損マウスでは抗核酸抗体がほとんど認められなかったのだが、有意差がぎりぎりであった。このことは、プリスタン投与により自己抗体は産生されるが腎炎が発症しないC57BL/6マウスで検討しているためと考えられ、腎炎を激烈に発症するBALB/cバックグラウンドのマウスに変えて検討する。プリスタン投与により炎症が発症するためにはTLR7が重要な役割を果たしていることは既に報告されており、我々はプリスタン投与により腹腔内に存在してくる可能性の高いTLR7の内因性リガンドの検討を行う。
本研究課題であるArl8b欠損マウスにおいて認められる角膜炎に関しては、樹状細胞が重要な役割を果たしているのかを検討する。既にCD11c-Creマウスと交配させて樹状細胞特異的にArl8bを欠損させる予定である。そして、TLR7が重要なのかどうかを検討するためにTLR7とArl8bの二つの遺伝子の欠損マウスを作製する。さらに、Arl8bが角膜の修復に関わっているのかどうかを検討するために、Arl8b欠損マウスを用いて角膜の修復実験を行う。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (7件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Human TLR4 polymorphism D299G/T399I alters TLR4/MD-2 conformation and response to a weak ligand monophosphoryl lipid A.2013

    • 著者名/発表者名
      Yamakawa Natsuko
    • 雑誌名

      International immunology

      巻: 25 ページ: 45-52

    • DOI

      10.1093/intimm/dxs084

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Essential role for Toll-like receptor 7 (TLR7)-unique cysteines in an intramolecular disulfide bond, proteolytic cleavage and RNA sensing2013

    • 著者名/発表者名
      Kanno Atsuo
    • 雑誌名

      International immunology

      巻: 25 ページ: 確定していない

    • DOI

      10.1093/intimm/dxt007

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Cleaved, but not truncated Toll-like receptor 9 as bona fide DNA-sensor2013

    • 著者名/発表者名
      Onji Masahiro
    • 雑誌名

      Nature communications

      巻: 確定していない ページ: 確定していない

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Glycyrrhizin and isoliquiritigenin suppress the LPS sensor toll-like receptor 4/MD-2 complex signaling in a different manner.2012

    • 著者名/発表者名
      Honda Hiroe
    • 雑誌名

      Journal of leukocyte biology

      巻: 91 ページ: 967-976

    • DOI

      10.1189/jlb.0112038

    • 査読あり
  • [学会発表] Arf-like GTPase Arl8b drives TLR7 into type I interferon-mediated autoimmunity2012

    • 著者名/発表者名
      Saitoh Shin-Ichiroh
    • 学会等名
      第35回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      福岡県
    • 年月日
      2012-12-11
  • [学会発表] Human TLR4 polymorphism D299G/T399I alters TLR4/MD-2 conformation and response to a weak ligand monophosphoryl lipid A2012

    • 著者名/発表者名
      Yamakawa Natsuko
    • 学会等名
      第41回日本免疫学会学術集会ワークショップ
    • 発表場所
      兵庫県
    • 年月日
      2012-12-07
  • [学会発表] Roles for proteolytic cleavage of TLR9 in primary immune cells2012

    • 著者名/発表者名
      Onji Masahiro
    • 学会等名
      第41回日本免疫学会学術集会ワークショップ
    • 発表場所
      兵庫県
    • 年月日
      2012-12-07
  • [学会発表] Detecting endogenous mouse TLR7 by a monoclonal antibody2012

    • 著者名/発表者名
      Kanno Atsuo
    • 学会等名
      第41回日本免疫学会学術集会ワークショップ
    • 発表場所
      兵庫県
    • 年月日
      2012-12-07
  • [学会発表] Monophosphoryl-lipid A activates TLR4 via LPS-Binding Protein-dependent and CD14 independent fashions2012

    • 著者名/発表者名
      Tanimura Natsuko
    • 学会等名
      第41回日本免疫学会学術集会ワークショップ
    • 発表場所
      兵庫県
    • 年月日
      2012-12-06
  • [学会発表] Arf-like GTPase Arl8b drives TLR7 into type I interferon-mediated autoimmunity.2012

    • 著者名/発表者名
      Saitoh Shin-Ichiroh
    • 学会等名
      第41回日本免疫学会学術集会ワークショップ
    • 発表場所
      兵庫県
    • 年月日
      2012-12-05
  • [学会発表] A GTPase driving TLR7 into type I interferon-mediated autoimmunity.2012

    • 著者名/発表者名
      Saitoh Shin-Ichiroh
    • 学会等名
      The 12th Biennial International Endotoxin Innate Immunity Society(IEIIS) meeting
    • 発表場所
      東京都
    • 年月日
      2012-10-24
  • [備考] 東京大学医科学研究所感染遺伝学ホームページ

    • URL

      http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/kanseniden/index.html

URL: 

公開日: 2018-02-02  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi