研究領域 | 内因性リガンドによって誘導される「自然炎症」の分子基盤とその破綻 |
研究課題/領域番号 |
24117709
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
肥田 重明 信州大学, 医学系研究科, 准教授 (10345762)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 癌 / 炎症 / サイトカイン |
研究実績の概要 |
病原体センサーには、外因性のみならず内因性のリガンドを認識する機構も存在し、これらの刺激によって生体の恒常性は維持されている。本研究課題では、腫瘍組織に注目し、癌の進展過程における腫瘍の微小環境を形成する癌細胞と免疫細胞の相互作用と種々の慢性炎症の役割について解析する。これまでにインフラマソーム形成因子の一つであるアダプター分子ASCを介した反応を中心に、腫瘍組織におけるインフラマソームの活性化制御機構とcaspase-1に依存しない種々の反応について解析した。その過程で免疫細胞や腫瘍細胞において、ASCと相互作用する分子を免疫沈降や質量分析等を用いて探索した。同定された候補分子にはRNAヘリカーゼDDXファミリー等の病原体センサー分子のみならず、細胞増殖関連分子や細胞骨格制御因子、炎症・細胞死関連分子など30以上の候補分子が含まれていた。ヒト転移癌等の進行性癌で発現が亢進しているアクチン関連分子も含まれており、これらがI型IFN産生の抑制にも関与し、癌の免疫監視機構や抗癌剤からの回避に関与する可能性が示唆された。また、shRNAによるASCやASCと相互作用する分子の発現抑制系や遺伝子高発現系を用いることで癌細胞では、運動能や転移能、そして接触阻害による細胞増殖抑制がASCの発現量と相関している結果が得られている。これはヒト進行癌でASCの発現がエピジェネティックに抑制されている報告と類似しており、現在その分子機序について解析している。また免疫細胞での機能を調べると細胞骨格制御因子群のいくつかがNLRP3インフラマソームの形成に重要な因子も含まれていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腫瘍細胞や免疫細胞を用いて、ASCと相互作用する分子を解析するために免疫沈降、質量分析を行いすでに多くの候補遺伝子を同定した。いくつかの分子については、ASCとの結合を確認後に、インフラマソームの活性化を含めた自然免疫反応の制御に重要である結果が得られている。また、癌の進行に伴う転移性獲得における分子機序についてもASCが重要な役割をしている結果が得られ、シグナル伝達分子含め詳細な分子機構の解析を行っている。発癌や抗腫瘍免疫におけるASCと炎症反応の解析については、現在マウスモデルを作成し、解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
腫瘍組織におけるASCの役割をさらに詳細に解析するために、腫瘍形成環境下におけるASCと相互作用する分子群について、免疫沈降と質量分析等によって追加で解析を行う。同定された分子群については、レトロウイルスベクター等による高発現系やshRNAによる発現抑制系を用いて、in vitroで機能解析を行い、その後、腫瘍組織における微小環境や腫瘍免疫反応との相互作用など生理的役割についても解析していく。
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