公募研究
ASCは、細胞がIL-1β を周囲に放出するために必須の分子で、ASC を含む複合体は、炎症を惹起するという意味からインフラマソームと呼ばれる。現在インフラマソームは、細胞外から侵入する多くの病原体や、細胞内の代謝産物などの危険物質を認識して活性化されることが報告されている。しかしながら、直接相互作用してインフラマソームを活性化する分子は不明である。そこで直接相互作用する分子を同定し、多くのインフラマソームに関連する疾患の分子標的とすることが強く望まれている。そこで、平成24年度は、愛媛大学無細胞生命光学研究センターのコムギ胚芽無細胞蛋白質合成技術を用いることによって、これまでの大腸菌を使ったリコンビナント蛋白質合成では、ミスフォールディングなどの影響により合成できなかったNLRP3、ASC、caspase-1を含む複数のインフラマソーム構成蛋白質の合成に成功した。また、標的分子の特定部位のビオチン化と、適切なtagの挿入により、試験管内でのインフラマソーム形成システムの構築に成功した。このシステムにより、雑多な細胞共雑物がインフラマソームを形成することが確認できた。次年度はこの雑多な細胞共雑物から、インフラマソーム形成に寄与する分画の精製を行い、特異的にNLEP3インフラマソームを活性化する分子の同定を行う。一方で、NLRP3分子に変異の認められる自己炎症疾患であるクリオピリン関連周期熱症候群のアミノ酸変異を導入したNLRP3を合成したところ、変異NLRP3のうち特定の疾患特異的な変異NLRP3は不溶化した。これは、疾患特異的インフラマソームの物理化学的性状の違いと疾患の関連を示唆するものかも知れない。
3: やや遅れている
現在までに、インフラマソームを持続的に活性化している内因性リガンドを同定し、今後は同定した内因性リガンドに対する抗体などのプローブを作成して、病理組織学的意義の検索を行う予定であった。しかしながら、試験管内でのインフラマソーム再構成システムの開発に想定以上に困難があったため、インフラマソーム再構成システムの構築に時間を要した。現在内因性リガンドを含んでいて、試験管内インフラマソーム再構成系を活性化する雑多な細胞共雑物まで分析を終えているが、現在までのところ内因性リガンドの同定に至っていない。
当初の予定どおり、インフラマソームを形成するNod-like receptors(NLRs)とASCの結合を検出するアルファースクリーンによる細胞の内因性リガンドの探索を続ける。384穴プレートに雑多な細胞共雑物から分画した成分の分析をつづける。同時に、コムギ無細胞蛋白質合成によって合成できたインフラマソームを雑多な細胞共雑物と一定時間インキュベートさせ、ストレプトアビジン結合アガロースビーズによって共沈させ、SDS-PAGEや2D-SDS-PAGEで展開し、リガンド候補分子を質量分析装置によって同定する。また、リガンド候補分子に対する抗体の作成と、インフラマソームの結晶化を試み、構造解析を行う。研究が当初計画どおりに進まない時の対応:1) インフラマソームを活性化するリガンドが高分子の蛋白質でないため、SDS-PAGEや2D-SDS-PAGEで展開して同定できない可能性が考えられる。対応策として、透析、限外濾過、オープンカラムクロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー、などで分画して、低分子成分を分画していく。実際にリガンドがすべて蛋白質以外の低分子化合物であった場合、平成25年度の研究計画である抗体の作成やmRNAの検出は望めないため、プローブは、発見したリガンドに反応する特異的プローブ(糖鎖に対するレクチンなど)に計画変更を考える。2) リガンドの同定ができないために、その後のプローブによる病理組織学的解析ができないことが予想される。対応策として、インフラマソームの試験管内再構成系が確立できたことから、この複合体そのものに対する抗体を作成し、インフラマソーム活性化の意義を病理組織標本において解析する。3) インフラマソームの結合部位の結晶化による構造解析ができないことが予想される。リガンドのない状態で結晶化する疾患特異的インフラマソームの構造解析に目的を変更する。
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http://www.pros.ehime-u.ac.jp/section/09.html