慢性炎症は様々な疾患発症の基盤となっているが、発症・維持機構そして収束機転は分かっていない。これらの機序を正しく理解することにより、様々な疾患の基盤となっている慢性炎症を制御することが可能となる。様々な組織において、様々な原因のもとで炎症は起こることが広く知られている。しかしながら多くの場合に、炎症は一時的なもので、自然に消退していく。炎症の発症、治癒機転を詳細に解析すると、最初に組織傷害が起こると、急性炎症が起こり、傷害組織において再生が始まり、炎症が収束し、再生が完成することにより治癒へと向かう。しかしながら、一部は急性炎症から炎症収束に向かわずに慢性炎症に至り、さらなる組織破壊、組織機能障害を伴う慢性疾患に移行する。これらの事象から慢性疾患の発症において重要な転機は、急性組織傷害から炎症収束に続く治癒に向かうものと、急性組織傷害から慢性炎症に移行し慢性疾患となるものの違いであることが分かる。何が慢性炎症疾患を防ぎ、慢性疾患と治癒がどのように分かれていくかは不明である。我々は、本研究により再生現象そのもの、さらには再生組織由来物質が炎症収束起点となることを見出した。同研究により、炎症収束を促し治癒へ向かわせる機構は、組織や臓器特異的な現象ではなく、組織や臓器を超えた統一的な機構があることを見出した。これらの機構を応用することにより、多くのヒト慢性炎症疾患を対象に治療法の開発へ結びつなげることが可能となる。
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