研究概要 |
ヒト単球白血病細胞株THP-1をPMAによりマクロファージに分化させ、alumによりNLRP3インフラマゾームの活性化を誘導した、その際様々な細胞内シグナル阻害剤をスクリーニングすることにより、Btk阻害剤(LFM-A13とPCI-32765)がNLRP3インフラマゾームの活性を抑制することを見出した。これらの効果はマウス腹腔マクロファージや骨髄由来樹状細胞、ヒト末梢血単球でも同様に観察された。LFM-A13は既知の様々なNLRP3インフラマゾーム活性剤(alum, ATP, Nigerisine, LeuLeu OMe)に対して抑制効果を示した。一方poly(dA:dT)により引き起こされるcaspase-1活性には効果を示さなかったことより、LFM-A13はAIM2 インフラマゾームには効果を持たないことが明らかとなった。更にBtk変異マウスXid由来のマクロファージでもNLRP3インフラマゾームの活性化が減弱していることが示された。 293T細胞を用いた強制発現の実験によりBtkはASC重合を促進する作用を有しており、LFM-A13はその重合を減少させることが明らかとなった。さらにBtkのTKドメインがASCのpyrinドメインとNLRP3のLRRと結合することを免疫沈降法で証明した。BtkがASCとNLRP3に共に結合することはBtk安定発現THP-1細胞を用いた免疫沈降法でも証明された。加えてLFM-A13はBtkとNLRP3の結合を阻害することも判明した。 Alumをマウス腹腔内に投与する腹膜炎モデルでは、WTマウスに比較してXidマウスでは浸潤好中球数が有意に少ないことから、BtkのNLRP3インフラマゾームの効果をin vivoでも確認することが出来た。 以上より私達はBtkはNLRP3インフラマゾームの活性化に重要な細胞内シグナル分子であることを証明した。これは痛風や動脈硬化等、NLRP3インフラマゾームが病態の中心となっている疾患に対する新たな治療戦略の開発につながると共に、ヒトBtk変異により引き起こされる先天性無ガンマグロブリン血症の病態解明につながると思われる。
|