研究概要 |
意図を持って行動する者を助ける味方/邪魔する敵という社会関係の認知を『ミ』/『テ』の記号で報告させる行動実験パラダイムを開発し、ニホンザル2頭に学習させた。1頭で行動実験を進め、意図を持って行動する者とそれを協力/妨害する者の役割が入れ替わっても、場面が代わっても、また同じ場面で助け方や邪魔の仕方の動作が変わっても、初学習で学習達成基準までに要した試行数と再学習で要した試行数の差を和で割った節約率は何れも正であった。したがって、登場人物同士の社会的関係をサルが適切な記号で選ぶことができるようになることがわかり、これらの区別を動画中の特定の手がかりや動作だけでおこなっていないことが示唆された。同様に社会関係を記号で分類させる課題と社会関係を評価させる課題をヒトの児童を対象としてテストした。その結果、直接身体が接触しない社会関係を教えた場合に6歳児では他の場面に汎化し難いが、7歳以降では成人同様の成績に近づくこと、評価課題を繰り返すと6歳児では社会関係の良悪をより明瞭に評価するよう自発的に評価を調節するが、7, 9, 11歳とこの傾向はなくなり、成人では逆に良悪を不明瞭に評価するようになった。上記分類課題と逆に、ミ/テの記号を手がかりとして呈示したあとで協力/妨害の関係を表す動画を選択させる課題も1頭のサルでは学習できた。また、サル自身に相手の意図に協力/妨害させる役割を行わせるインタラクティブな課題のプロトタイプを開発した。行動実験に供したサルとは別の個体で、社会認知を担う大脳ネットワークを構成する上側頭溝、側頭極、内側前頭葉への皮質脳波電極留置手術法を確立した。
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