研究領域 | 精神機能の自己制御理解にもとづく思春期の人間形成支援学 |
研究課題/領域番号 |
24118504
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
高橋 史 信州大学, 教育学部, 助教 (80608026)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 問題解決 / 認知発達 / 思春期 / 環境からのフィードバック |
研究実績の概要 |
平成24年度は、環境からのフィードバックの参照による反応の結果予期の早期改善効果について実験的に検証した。 公立中学校に在籍する中学1年生60名(男子34名、女子26名)を、比較対照群と実験群にふりわけた。両群共に、通常授業時間を用いて1回50分計2回の実験的授業に参加した。比較対照群は、反応の結果予期のトレーニングを受けた。実験群は、比較対照群が受けたトレーニングに加えて、同年代の役者が対処法を実行して相手が反応するまでの一連の流れを収録したビデオを視聴することで、「反応の結果予期」→「ビデオ視聴(環境からのフィードバック)」→「反応の結果再評価」という相互参照を疑似的に体験した。その結果、実験群においてのみ、向社会的対処の有効性予期が顕著に向上した。 この結果は、学校教育現場で臨床的対応を行う際の時間的制約の解決に一石を投じるという点で、一定の臨床的意義を有する。思春期の子どもを対象とした従来型の自己制御支援(認知的アプローチ)は、介入効果を得るまでに数十回のセッションを要するため、わが国の学校教育現場では広まりを見せてこなかった。一方、本研究の結果から、思春期の認知発達に関する基礎的知見を応用することで,2セッションという限られた時間の中でも十分な自己制御支援が可能であることが示された。これは、思春期の精神機能の自己制御に関する基礎研究の積み重ねによって社会問題の解消に貢献するという本領域の有用性を、直接的に体現した結果であるといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定どおり、環境からのフィードバックの効果に関する実験的検討を実施することができた。小学生を対象とした同実験も実施しており、介入効果の発達的差異の検討にも着手している。 平成25年度研究計画についても、おおむね当初計画どおりのスケジュールを予定しており、実験群および比較対照群への介入は終了している。平成25年度は、介入から6ヶ月後および1年後のフォローアップデータを収集することで、自己制御支援の利点と限界点を明らかにする。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は、学校教育現場において活用される研究知見の提示を目的としたものであり、学校教員からの協力が必要不可欠である。そのため、学校教員対象の研修会等で研究知見および具体的トレーニング方法を紹介することで、研究成果を積極的に発信するとともに、研究参加希望校の募集を行う。また、学校教員および児童生徒を対象とした簡易なストレス調査を各小中学校に提案し、希望する学校にて実施する。これによって、本研究が提案するトレーニング方法に対する潜在的なニーズを把握し、各小中学校責任者と共有することで、介入を必要とする学校および学級に介入を着実に提供していく。 現時点において、研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での問題点等は浮上していない。
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