公募研究
本研究は、第一の目的として思春期前後における音声言語の学習メカニズムに関わる脳内基盤とその発達的変化を、脳機能イメージング手法と行動的手法で明らかにする。第二の目的として、ここで明らかになる言語習得能力やその脳基盤と、思春期特有の様々な因子(自己制御能力に関与する種々の認知能力、情動反応)がどのように連関しているかを明らかにする。これらの目的のもと、乳児期、学童期、思春期、成人期の4つの年齢グループに対してそれぞれの実験を行い、比較検討する。初年度である今年度は、1.自己制御能力を検討するための行動調査、脳機能調査の予備実験を数種行い、どのような実験やタスクが最適であるかを検討した。2.言語学習についての実験刺激についても予備実験を行い、英語学習教材開発に携わる研究者との連携により、実験プロトコールを作り上げた。3.乳児を対象とした、音韻カテゴリー学習前後でのresting state connectivity、音韻学習中の脳機能結合、学習後の音韻弁別反応を近赤外分光法(NIRS)で計測する実験を開始した。この中でも1.の予備実験を経て、成人の本実験を行った性格特性と前頭葉の情動反応についての結果を示す。思春期の自己制御を検討する上で重要な要因である情動制御はこれまでの脳機能研究より前頭葉の深い関わりが指摘されている。本研究では、情動を喚起する刺激を処理する際の、前頭葉の無意識的、自動的な脳活動をNIRS計測し、性格検査で捉えた性格特性との関係を検討した。実験の結果、いくつかの脳部位において性格特性と脳活動の有意な相関がみられた。例えば右前頭極においては神経症傾向が強いほど不快刺激に対する反応が強い、一方で 開放性、外向性、誠実性傾向が強いほど不快刺激に対する反応が低い特徴がみられた。性格によって情動イベントに対する前頭葉制御が異なることが示唆された。
3: やや遅れている
研究実績概要で述べた1.の自己制御関連の予備実験において、数種の実験を行ったが、最適な実験系をなかなか見いだせず、時間がかかった。例えば、この実験はイギリスとの共同研究としてfMRI実験を行う計画があり、打ち合わせやデータ検討を重ねたが、先方の人的資源など諸事情で遂行が困難な状況にある。このため、共同研究とは別の自己制御実験もあわせて行う予定である。一方で、音韻学習についての実験はほぼ順調に進展しており、乳児実験は実施しているところであり、学童や思春期児についての実験も学習の装置や実験素材も準備完了している。
研究実績概要で述べた3.は乳児の音声言語学習についてデータを収集し続け、解析を行う。研究実績概要2.の音声習得・学習についての脳機能実験は、5,6月に成人について実験を行ったうえで、今年度の夏季休暇中に学童、思春期児童に対する実験を実施する予定である。その際に1.の自己制御系の実験も併せて行う予定であるが、時間や(強度の強い)不快刺激を学童に見せて良いか等の倫理的問題で、成人と同様の実験を行えるか検討の余地がある。最終的にはこれらの結果を総括し検討することで、思春期前後の音声言語の脳の可塑性、学習達成度と自己制御能力を始めとする種々の認知能力の関係を検討する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
PLoS One
巻: 8 ページ: e58906
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