研究領域 | 精神機能の自己制御理解にもとづく思春期の人間形成支援学 |
研究課題/領域番号 |
24118511
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研究機関 | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
花川 隆 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 脳病態統合イメージングセンター分子イメージング研究部, 部長 (30359830)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 意思決定 |
研究実績の概要 |
61名の健常大学生に、中枢遂行系課題であるハノイの塔課題(七段)に取り組んでもらった。結果、32名が七段を完成させるまで取り組む(平均所要時間40分)、29名は途中で辞退する(決定までの平均所要時間16分)という意思決定を行った。知的レベル(WAIS-3)、気質(こだわり、誠実性)や実験前に自己申告してもらった「やる気」には両群の間で差がなかった。次に、実験前に3テスラ磁気共鳴画像(MRI)を用いて撮像した二種類の画像を用いて、両群間に脳構造の差があるかを検定した。(1)三次元撮像したT1強調画像を用いて、局所灰白質量の差があるかを全脳で検定した(voxel-based morphometry法)。結果、両側前頭極の灰白質量に差を認めた。(2)拡散強調MRI画像を用いて白質統合指標(fractional anisotropy)に局所的な差があるかを全脳で検定した(tract-based spatial statistics法)。結果、前頭極直下の白質統合指標に差を認めた。これら灰白質と白質の構造の差が認められた部位は、予備実験(外国語学習)において発見した行動目標を達成に関わる領域と完全に一致した。設定した行動目標を達成するまで努力を継続するという自己制御能力が、大脳皮質前頭極の機能によって介在され、少なくとも中枢遂行と外国語学習という異なる行動ドメインに共通した汎化性の高い機能であることが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
一旦設定した行動目標を達成するという自己制御能力が、大脳皮質前頭極の機能によって介在され、少なくとも外国語学習と認知課題(中枢遂行系課題)という異なる行動ドメインに共通した一般性の高い機能であることを発見した。この知識にもとづいて磁気共鳴画像を用いた判別器を設計したところ汎化性能を示した。この成果は産業財産権として特許出願に至り、この点で予想以上の伸展と考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後、言語学習と認知遂行機能研究によって発見した前頭極の機能が、系列運動の学習目標達成に関わっているかを検討する実験を行っていく。メタ認知力及び報酬の時間割引率を個人で評価したうえで、比較的小さな成果に対して頻回に評価する群と、大きな達成に対して初めて評価する群に分けて実験を行う予定である。この結果に基づき、個人の性向に合わせた目標設定技術や学習法を提案していきたいと考えている。
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