研究領域 | 動的・多要素な生体分子ネットワークを理解するための合成生物学の基盤構築 |
研究課題/領域番号 |
24119503
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
古田 芳一 東京大学, 新領域創成科学研究科, 助教 (40613667)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | DNAメチル化 / 制限修飾系 / メチローム / PacBioシークエンサー / DNAメチル化多様化メカニズム |
研究概要 |
本研究は、ドメイン配列が移動することによってメチル化標的配列を多様化するメカニズムを応用し、望みの認識配列を持つメチル化酵素を創出し、ゲノム中のメチル化分布を自由に作り出す「エピゲノム工学」を確立することが目的である。これまでの遺伝子制御ネットワーク解析を拡大し、ゲノム工学産物に多様なトランスクリプトーム状態を実現し、合成生物学の強力なツールとしての活用が期待できる。本年度は実施計画として、(A)配列認識ドメイン多様性の網羅的情報解析と、(B)I型メチル化酵素・配列認識酵素の精製と認識配列の決定を予定していた。 (A)ゲノム解読が完了している38株のピロリ菌について、I型制限修飾系の配列認識遺伝子を比較した結果、16種類のドメインを見出した。また、III型メチル化酵素のドメインを比較することによって、新たなメチル化多様化メカニズムを見出し、ピロリ菌のメチル化状態が複数のメカニズムによって多様化していることが示唆された。 (B)I型メチル化酵素・配列認識酵素の標的配列解析のため、当初はタンパクの精製や生化学実験による解析を予定していたが、近年ゲノム上のメチル化塩基を効率よく検出できるPacBioシークエンサーが使用できるようになったため、こちらの手法を用いる方針に変更した。検出法の確認のため、メチル化酵素(メチル化標的配列既知)を持つ大腸菌のゲノムDNAと、同じメチル化酵素を欠損させた大腸菌のゲノムDNAについて、PacBioシークエンサーを用いてシークエンシングを行った。既知のメチル化標的配列を十分な精度と感度で検出できたため、ピロリ菌5株についても解析を行い、1株あたり16-26種類のメチル化標的配列が検出された。標的配列を比較することにより、I型配列認識遺伝子の標的配列を決定することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メチル化関連遺伝子の情報解析については予定通り完了した。 生化学実験によるメチル化標的配列決定を、PacBioシークエンサーを用いた検出方法による決定に切り替えたが、対照実験も順調に行え、ピロリ菌のゲノムについても問題なくデータを得られた。当初の生化学実験よりもより精度、感度の高い結果が得られた。 以上より、当初計画していた内容については完了しているため、順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、メチル化のトランスクリプトームへの影響を調べるため、ピロリ菌の野生株とメチル化欠損株のトランスクリプトーム比較解析を行う。また、多様なメチル化の導入による形質への影響を調べるため、様々なメチル化遺伝子を大腸菌に導入し、その影響を発現、形質の両面から解析する。
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