研究概要 |
本研究の目的は、リン脂質の生合成に関わる酵素を無細胞系で合成し、リン脂質代謝系を試験管内で構築・再現する事である。これにより、リン脂質代謝をモデルとした、膜蛋白質分子間ネットワークの無細胞内再構築を試みる。このような人工的なシステムを構築することで、代謝系を総括的な視点から解析できる系を確立させることを目的といている。これまでに代謝初段階の反応については申請者等の過去の研究によって無細胞構築に成功している。これをさらに複雑化させることで、基質の種類や、脂肪鎖のバリエーション、反応条件などによってどのように推移するかを、代謝全体としての解析を行う。 まず、リデザインした脂質生合成経路に関わる8種のタンパク質について、無細胞系での合成を行った。次に脂質を円盤状に束ねたNanoDisc(ND)を系内に投入し、タンパク質を合成した後、Ni-charged MagnetBeadsによりNDを単離した。その結果、合成されたタンパク質の80%以上が自発的にND膜に挿入していることが確認できた。しかし、PssAに関してはほとんどElution画分に得られていないことから、可溶性のタンパク質であると思われる。また、GPATのみ膜局在効率が著しく低い(20%以下)という結果になった。これは、タンパク質の持つ立体構造の性質によるものと推察される。 他の班との連携として、B01陶山班の庄田先生とliposome内での膜タンパク質合成系の構築を行っている。人工細胞の実現化を目指し、多種の方法によるliposome内タンパク質合成方法とその定量化について、また無細胞系をベースとした合成生物学についてそれぞれ、論文1報(Chembiochem, 2013, 14:1963-6)とブックチャプター(Synthetic Biology Tools and Applications, 2013, ELSEVIER, Edt. H. Zhao, Chapter 14)を作製した。今後はさらに、各酵素の機能評価と脂質合成代謝の再構築を目指す。
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