公募研究
外界の出来事を予測し、適切なタイミングで意思決定を行うためには、時間の情報が不可欠である。本研究では、主にサルを用いて時間情報処理に関わる脳内機構を2種類の行動課題で調べた。第一の研究では、一定の時間間隔で現れる視聴覚刺激の不意の欠落を検出させる(欠落オドボール課題)。これには試行ごとに異なる刺激間隔を学習し、次に現れる刺激のタイミングを予測し、欠落に対して予測誤差の信号を生成する必要がある。これまでに、小脳歯状核に刺激提示の時間間隔をコードするニューロン群を見いだしており、H25年度はこれをJ Neurosci誌に発表した。さらに本研究では運動性視床の神経活動を解析し、一定の成果をあげることができた。視床ニューロンの一部が繰り返し刺激に対する応答を興奮性から抑制性にスイッチすることを発見し、反応性から予測性の情報変換がこのレベルで行われていると考えられた。これらの成果は学会で報告するとともに、論文作成に向けて研究を継続している。また、第二の課題では、手がかり刺激の提示後、一定の時間経過の後に自発的に眼球運動を行わせた。この課題の際に、漸増する準備活動を基底核(線条体)および小脳核(歯状核)で探索し、両部位の神経活動を比較検討した。前者は再現時間によって活動の上昇率が変化し、目標とするタイミングまでの相対的な時間経過をコードしているのに対し、後者では再現時間に関わらず、運動に一定時間先行して活動を上昇させ、運動タイミングの微調整に関与していることが示唆された。これらの研究成果も共同研究者の助教および学生が複数の学会で報告している。申請者はこれらの成果をさらに大きく発展させるため、H25年度に新たに発足した新学術領域「こころの時間学」に計画班員として参加することとなった。重複制限のため、本公募課題はやむなく廃止することとしたが、研究は発展的に継続する。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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J. Neurosci.
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脳と神経(Brain and Nerve)
巻: 65 ページ: 941-948.