精神疾患の中でも、強迫スペクトラム障害に分類される疾患は、セロトニン神経系の異常を背景とした予測と意思決定の障害が病態の基盤にあると推測されている。本研究では、共通の神経基盤が想定されているが、異なる症状を呈する神経性大食症と抜毛症を対象に報酬課題遂行中の脳活動を機能的MRIを用いて測定し、データを数理モデルに基づいて解析することで、短期、及び長期の報酬予測に関連する脳領域を明らかにし、健常者との違い、及び疾患毎の違いを明らかにすることを目的とした。また、同時に安静時機能的MRI、構造画像、拡散テンソル画像を撮像して数理モデル解析により得られた結果と合わせて解析することで、多様な精神症状がどのように予測と意思決定の障害と関連するかを包括的に解明することを目的としている。 神経性大食症患者4名と抜毛症患者1名を対象に報酬課題を遂行中の脳活動を機能的MRIにより測定し、同時に脳構造画像、拡散テンソル画像、安静時の機能的MRIの撮像を行った。結果として、神経性大食症患者においては、報酬関連活動が腹側、背側線条体を通じて低下しており、抜毛症患者では、短期報酬に関連する腹側線条体の活動が亢進していると共に、背側線条体にかけて拡大していることが示唆された。 また、当新学術領域の他の研究者と共に、第34回日本生物学的精神医学会において、「予測と意思決定を制御する神経回路と精神疾患」、11th World Congress of Biological Psychiatryにて、”Reward prediction and striatal dysfunction in psychiatric disorders”と題するシンポジウムを開催し、当領域のテーマである予測と意思決定を制御する神経回路と精神疾患の関わりについて研究成果を関連する研究者に発表する機会を作った。
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