研究領域 | 予測と意思決定の脳内計算機構の解明による人間理解と応用 |
研究課題/領域番号 |
24120517
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
尾仲 達史 自治医科大学, 医学部, 教授 (90177254)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | オキシトシン |
研究実績の概要 |
本研究は、オキシトシン受容体が活性化されると相手を見知った相手としての行動を選択するという仮説を検証し、このオキシトシンの作用機序を明らかにすることを目的とする。 ヒトにオキシトシンを投与すると、扁桃体の活動が修飾され、相手を信用した行動を選択するようになること、さらに、オキシトシン受容体遺伝子の遺伝子多型と楽観的な予想を立てる傾向とが関連していると報告されている。一方、齧歯動物は見知らぬ相手に対しては探索行動あるいは攻撃行動を示し、慣れるに従いこれらの行動は減少していくことが知られている。オキシトシンを投与しておくと、次回会わせたときの探索行動が減少する。これに対し、逆に、オキシトシン受容体阻害薬を投与すると探索行動が増加する。これらのデータはオキシトシンが行動選択修飾作用を持つことを示唆しているが、どのオキシトシン産生細胞が関与しているのか、あるいは、オキシトシンの作用部位については不明なままである。 本研究は、様々な遺伝子改変動物を使用して、同種同性の動物と接触することで活性化されるオキシトシン産生細胞を同定し、オキシトシン活性化のための神経回路を明らかにし、さらに、オキシトシンの作用部位を同定することを目的としている。 24年度は、同種の若い動物と一緒にさせた状態に置いておくと、オキシトシン産生ニューロンが活性化することを最初期遺伝子の蛋白質産物であるFos蛋白質の発現で確かめた。さらに、このオキシトシン産生ニューロンを新しい動物に会わせるときに活性化しておくと、次回会わせたときの探索行動が減少した。これらのデータは、視床下部のオキシトシン産生細胞が行動選択を修飾していることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りに、社会的接触により活性化されるオキシトシン産生細胞を同定し、さらに、その活性化により社会行動が修飾されることも見出した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、オキシトシン産生ニューロンを活性化させるための神経回路を解明と、時期・場所選択的にオキシトシン産生細胞を破壊できる遺伝子改変ラットのラインの確立と破壊するための方法の確立を行う。
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