研究領域 | ヘテロ複雑システムによるコミュニケーション理解のための神経機構の解明 |
研究課題/領域番号 |
24120702
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
嶋 啓節 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60124583)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 二重課題 / 霊長類 / 局所電位 / 内側運動野 / 外側運動野 |
研究実績の概要 |
脳の高次運動野はその解剖学的位置によって前頭葉の内側・外側に分けられ,個体が目的指向の行動を遂行するために協調して働くと考えられるが,その協調原理の多くは明らかになっていない.申請者らは,外側・内側の高次運動野を,異なった機能を持つシステムの集合体-マルチシステム-と捉え,複数課題の並列処理に関わる新しい脳の協調原理を解明することを目標としている.申請者らは当初の計画にのっとり,記憶誘導性の順序動作課題を主課題とし,これに視覚誘導性の動作が割込む形の二重課題をニホンサルにトレーニングした.既に一頭のサルからは,内側・外側運動関連領野より局所電位(LFP)及び細胞活動の計測が終了しつつある.現在,二頭目のサルの訓練も完了しており,25年度より一頭目と同様の記録を行い,再現性の確認に資する予定である.本課題に関連づけて,両半球の内側運動野より記録したLFPのスペクトル解析を行った結果,興味深い発見がなされた.概要は(1)片手動作の準備時の方が両手動作の準備時よりもLFPの位相の同期が高い.(2)両半球のLFPの同期の高さは,直後に行う運動のパフォーマンスを予測する.(3)両半球のLFPの間の位相差が,右手の動作を準備しているときと,左手の動作を準備しているときで異なるということである.いずれも新たな知見であり,特に半球間の位相差が課題内容によって変化するという(3)の発見はこれまでに例がない.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験自体の進捗状況は順調であり,残り一頭の動物からの記録を行うのみである.解析に関しては,昨年度中にLFP位相同期のスペクトル解析を行うツールを開発し,両半球の内側運動野から記録したLFPの解析に応用した.内側・外側の領野から同時記録したデータに対しても簡単に応用可能であるので,解析手段は既に確立したと言ってよい.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は二頭目のサルからの記録を精力的に進め,前の項目で述べた解析ツールを用いて内外側の高次運動野から同時記録したデータを解析する.内側高次運動野には,割込み課題中に主課題の内容を表現する持続的細胞活動が存在することが予想されるので,LFPに加えて単一細胞活動の記録も行う.
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