研究概要 |
平成25年度は、主に以下の二点につき、研究を推進した。 迷路中のゴールに向けてカーソルを数手かけ移動させる課題(経路探索課題)を遂行中のサルの前頭前野神経細胞活動を解析した。以前の研究で運動準備期及び実行期に各手それぞれのカーソル方向を一過性に符号化する細胞群を見出した。今年度は、その符号化に対する興奮性細胞と抑制性細胞の活動バランスを検討した。その結果、準備期には符号化開始直前に抑制性細胞活動の相対的上昇が見られる一方、実行期にはそのような上昇は見られないことを見出した。このことは、前頭前野神経回路では興奮抑制のバランスの変化が、行動の実行より行動計画に大きな役割を果たすことを示唆している。 一方、微細加工技術の発達により、記録点が数十~数百μm間隔で正確に配置された多重電極の作製、及び、脳から多数の神経活動を同時記録することが可能となってきた。そのような多重電極を用いると、各記録点で得られた局所電場電位(local field potential, LFP)からシナプス入力を反映すると言われている電流源(current source density, CSD)解析を行うことが可能となる。CSDと神経細胞からの出力を反映するスパイク発火を併せて解析することにより、動物の行動発現の背後にある局所神経回路の機能解明が飛躍的に進むことが期待される。今年度は、新奇・形操作課題遂行中のサル前頭前野局所電位を記録し、電流源解析によりシナプス入力の空間位置を解析した。その結果、古くから解剖学的に示唆されていたカラム構造に相当する、周期的構造を世界で初めて電気生理学的手法で見出した。
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