研究領域 | ヘテロ複雑システムによるコミュニケーション理解のための神経機構の解明 |
研究課題/領域番号 |
24120709
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
手老 篤史 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 准教授 (60431326)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 認知科学 |
研究実績の概要 |
人間の脳が持つ高度な情報処理能力は我々にとって最も身近であるが、複雑で重要な問題である。脳内ではθ波やα波と呼ばれるヘテロな振動数の脳波が測定されており、これらがお互いに影響し合って情報処理を行っている。一方でアメーバやゾウリムシといった単細胞生物も内部にヘテロな周期の振動現象を持ち、それらの共振現象を利用する事によって原始的な知性というものが存在することが近年わかってきた。私はこれまでに数理モデルを用いてこのようなヘテロなリズムから創発される知性に対して研究を行ってきた。 また、共同研究者である同領域B01G1 山口陽子班らにより人間の脳波についての興味深い研究が行われている。聴覚経由のタスクと視覚経由のタスクで脳内の活動部位が自発的に振り分けられるという実験である。本課題ではこの実験を通して脳波に関する数理モデルを構築し、それと原始的な知性を比較することにより脳の高い情報処理能力の理由を解明を目的として研究を行ってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々はこれまでに前頭部分(AF3), 側頭部分(P5), 頭頂部分(Pz)における電位に着目した数理モデル(Ver. 1モデル)を構築し数値計算を行ってきた。それに加えてAF3とP5、AF3とPzの双方向でやり取りされる情報に関する数理モデル(Ver.2 モデル)の構築も行った。これにより、実験にて測定された両ワーキングメモリータスク時のAF3の位相差がどのようにして脳内の情報振り分けを担っているのかを再現することが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は上記の新しい数理モデルの数値シミュレーションを行い、脳内の情報処理についてさらに理解を深める。次にVer. 1モデルが各部位の動きを再現しているのに対し、Ver. 2モデルが各部位間の情報伝達を再現していることから、これらを組み合わせることにより、前年度までの数値シミュレーション結果を指標とし、脳内の各部位ごとのニューロンネットワークを構築し、脳内の情報伝達を再現する数理モデルの構築を行う。それを基に共同研究者であり実験を担当している山口班らとディスカッションし、実際の脳の実験に対してフィードバックを行う。
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