研究領域 | ヘテロ複雑システムによるコミュニケーション理解のための神経機構の解明 |
研究課題/領域番号 |
24120712
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
夏目 季代久 九州工業大学, 生命体工学研究科(研究院), 教授 (30231492)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | セルアセンブリ / 神経情報学 / 海馬スライス / カルバコール / β波 / 多点電極 / 記憶想起 / てんかん波 |
研究実績の概要 |
記憶が無いと相手の事も忘れてしまうのでヘテロ脳間コミュニケーションにとって記憶過程は重要な機能である。本研究はコミュニケーション神経情報学にとって必要なダイナミカルな記憶情報処理過程の解明を目的とする。以前に提案されたダイナミカルセルアセンブリ(DCA)は、記憶学習の脳内表象として時間構造を持つ。しかし、まだ実験的に証明されていない。脳内海馬では、記憶学習に関わっているθ波、β波などの脳波が観察されており、アセチルコリン作動薬を海馬スライスに投与するとそれらの脳波が誘導される。脳波発生中には少数の神経細胞が同期発火し、その発火が伝搬しており、この事は、脳波中、複数のDCA が生成している可能性を示唆している。本研究では、海馬における記憶の表象と考えられているダイナミカルセルアセンブリ(DCA)の測定及び、その性質を明らかにする。海馬はエピソード記憶をセルアセンブリの形で表現しているかどうかを以下の方法により明らかにする。 今年度は、まず、ラット海馬スライスに誘導される自発脳波のシナプス電流の時空間パターンを測定する。海馬スライスを切り出し、平面型多点電極測定システムにより、海馬内神経発火の時空間神経発火パターンを海馬CA3内で測定する。 アセチルコリンで誘導される機能的リズム中の1種であるθ波中の神経発火の時空間パターンを測定した。カルバコールは海馬スライスに間欠的にθ波を発生させる。まず錐体細胞体層からシナプス層にかけてθ波の電位を測定すると極性が逆転する。従って測定電位は体積伝導の結果で無く、シナプス電流双極子の結果であると思われる。またθ波発生中、CA3bからCA3aへ電流シンクが伝搬する事が明らかになった。この伝搬はバーストが変わっても観察され、かつ異なるスライスでも観察される。 従ってθ波の時空間パターンは海馬情報処理における時計の役割があるかもしれない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多点電極測定システムを立ち上げ、カルバコール誘導θ波及びてんかん波の時空間パターンを測定し、それらの違いを明らかにした。またその結果を国際会議で報告予定である。従って上記の結論を出した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、海馬スライスθ波中、β波中に下記の実験により発火パターンに変化するか測定する。 次の3種類の刺激によって誘導されるLTPについて調べる。3種類の刺激は、①テタヌス刺激(100Hz、1 秒間)、②θバースト刺激(100Hz、4発刺激を5Hz で4、5 発刺激)、③カオス刺激、である。刺激電極から、上記刺激を行い、歯状回・CA3 錐体細胞シナプスにおいてLTPが誘導される事を確認した後、LTP 誘導刺激前後で、CA3錐体細胞の電流シンクの時空間パターンに変化があるかどうか確認する。 実験に用いているシナプスLTP 誘導機構に関わっているのは、シナプスにおけるNMDA受容体の関与である。従ってNMDA受容体阻害薬であるAP5を用いてLTPを阻害した時に、上記の結果が再現するかどうかを測定する。 以上の結果より、海馬における記憶表象であるダイナミカルアセンブリを明らかにする。
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