研究領域 | ヘテロ複雑システムによるコミュニケーション理解のための神経機構の解明 |
研究課題/領域番号 |
24120717
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
松元 健二 玉川大学, 脳科学研究所, 教授 (50300900)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 動機づけ / 磁気共鳴画像撮影 / 社会性 |
研究実績の概要 |
コミュニティ内における社会規範はコミュニケーションを通じて形成され、コミュニティのメンバー各々の意思決定の基礎となる一方で、コミュニケーションを通じてダイナミックに変容する。この社会規範の価値表現およびその認知的変容の神経基盤を脳機能イメージング法によって明らかにするために、さまざまな社会規範および非社会的な知識の信念の言語的呈示刺激を、言語学的に統制して作成し、各々の信念に対してどのくらい賛成であるかを8点尺度で評価する「社会規範/非社会的信念評価課題」を遂行中の健康な被験者27名に行って貰った。課題遂行中の被験者の脳活動をfMRIを用いて計測した結果、社会規範と非社会的信念のいずれの価値も、左側の側頭頭頂接合部において表現されていることが分かった。また、予定を前倒しして、特定の社会規範もしくは非社会的信念を否定もしくは肯定する説得メッセージを連続的に呈示して、それらにどれだけ感心したかを評定する社会規範/非社会的信念説得課題も同被験者に行って貰い、課題遂行中の脳活動を、fMRI を用いて計測した。その結果、側頭頭頂接合部は社会規範に対する説得に特異的に反応することが分かった。このことは、言語的に呈示された信念についての価値表現が、左側頭頭頂接合部において表現されており、社会規範に対する説得によるその価値変容にも同部位が関与していることを示唆している。これらの成果は、3つの国際学会において、口頭もしくはポスターによる発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度の計画で予定していた社会規範の価値表現だけでなく、次の社会規範の変容についての実験も終了し、現在、社会規範の中でも、他者との間での選択機会の均等について焦点を絞った実験も追加で行っている段階にあり、既に論文執筆も進めている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、この側頭頭頂接合部が、他のどのような脳部位とどのように相互作用することによって、社会規範の変容を起こすのかを、fMRIによる脳活動計測および機能的結合解析によって調べ、結果を論文にまとめる。さらに、社会規範の中でも、他者との間での選択機会の均等について着目し、実際に他者と対峙して行う課題を遂行中の脳活動を、fMRIを用いて計測し、その神経基盤も調べる。具体的には、選択肢の数と結果の平等と比較することにより、選択機会の均等についての脳内価値表現部位を調べる。対人環境の影響を詳細に調べるために、互いに対峙する6名が同時に課題を行う社会的実験を新たに導入するので、6名同時に課題を行うことができるような実験器具・設備を整える必要がある。
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