公募研究
アクチン骨格の再編成は細胞の運動、形態形成、分裂など細胞の動的活動において中心的役割を担っている。細胞内においてアクチン骨格はアクチン繊維と多様なアクチン結合蛋白質から構成される過渡的複合体として存在しており、細胞はこの複合体の形成と崩壊を時空間的に制御することによって運動、形態形成などの動的な活動を行っている。生細胞内のアクチンの重合・脱重合の動態をリアルタイムに可視化、定量化することはこれまで困難であったが、私達は、可逆的な光活性化蛍光蛋白質Dronpaを用いて、生細胞内の局所における単量体G-アクチン濃度の経時的変化を定量的に測定する新技術s-FDAP (sequential fluorescence decay after photoactivation)法の開発に成功した。本研究では、蛍光の減衰を11回のtime pointで測定する手法を開発し、より高感度で精密なG-アクチン濃度変化の測定に成功した。この手法を用いて、メカニカルストレスによって細胞内G-アクチン濃度が急速に上昇することを明らかにした(Nat. Cell Biol., 2013)。また、蛋白質の複合体形成を高感度で検出するための新たなBimolecular Fluorescence Complementation (BiFC)プローブを開発し、これを用いて、コフィリンとアクチンの結合を阻害する低分子化合物としてサイトカラシンDを同定した(BBRC, 2012)。さらに、血清刺激による乳癌細胞の遊走において、アクチン繊維に富むラメリポディアとよばれる過渡的複合体が形成されるが、ラメリポディアを先導端一方向に形成するのに必要なRho-GEFとして、p63Rho-GEFを同定した(FEBS Lett., 2012)。
2: おおむね順調に進展している
生細胞内のアクチン単量体濃度の時間的、空間的変化を解析するイメージング技術、連続FDAP法と多点FDAP法の開発に成功した。本年度は、s-FDAP法を改良し、より高感度、高精度で生細胞内のアクチン単量体濃度を測定することが可能となり、メカニカルストレスによる細胞内のアクチン単量体濃度の急速な上昇を示すことができた。さらに、蛋白質間相互作用を検出するプローブを開発し、蛋白質間相互作用の阻害剤のスクリーニングに活用し、阻害剤の同定に成功した。また、ラメリポディアというアクチン過渡的複合体形成に関わるシグナル分子としてp63RhoGEFの同定にも成功した。以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
今後は、s-FDAP法や多点FDAP法をアクチン結合蛋白質や微小管など他の細胞骨格、細胞膜結合因子に応用することを計画している。また、BiFC法を用いたコフィリンーアクチン複合体の高感度検出システムを用いて、コフィリンリン酸化酵素であるLIMキナーゼの阻害剤を探索することも計画している。これらの手法で得られた結果に基づいて、細胞運動、形態形成、極性形成におけるアクチン過渡的複合体の形成機構と機能を解明することが今後推進すべき課題である。
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http://www.biology.tohoku.ac.jp/lab-www/mizuno_lab/