研究概要 |
本研究では,過渡的複合体が関わる生命現象の統合的理解という観点から,翻訳と共役したタンパク質輸送時に一 過的に形成されるリボソームを含む複合体に焦点をあてた。大腸菌では膜貫通領域を1回または2回もつ膜タンパク質の多くは,膜タンパク質YidCによって膜へと組み込まれる。このとき,YidCとリボソームが複合体を形成し膜組み込みするとされている。YidCはバクテリアだけでなく,ミトコンドリアと葉緑体に保存された膜タンパク質である。YidCの詳細構造の決定は,ホモログも含めされていなかった。本研究において,はじめてYidCの結晶構造を2.4A分解能で決定した。YidCは5回の膜貫通領域から構成されており,その膜貫通領域に親水性の溝をもつユニークな構造体であった。YidCの変異体解析によってこの凹みには機能発現に重要な保存されたアルギニンが存在してることを示した。さらに,アルギニンと基質タンパク質の負電荷をもったアミノ酸が電荷的に相互作用することを間接的に示すデータを得た。さらに,部位特異的クロスリンク実験の結果から,凹みと基質が直接相互作用することを示した。以上のことから,YidCは静電的な相互作用で,基質タンパク質を一旦,親水的な凹みにキャプチャーした後,膜へと組み込む新しいモデルを提唱した。本結果は主要な科学雑誌に報告予定である(Kumazaki et al., in press)
|