研究領域 | 過渡的複合体が関わる生命現象の統合的理解-生理的準安定状態を捉える新技術- |
研究課題/領域番号 |
24121707
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 邦律 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (20373194)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | オートファジー / オルガネラ / オートファゴソーム / タンパク質分解 / 出芽酵母 / 真核細胞 / Atgタンパク質 / 隔離膜 |
研究概要 |
オートファゴソーム形成とは、細胞質に出現した小さな袋状の膜が伸展して隔離膜となり、最終的に端が閉じて、被分解物を内包した球状の二重膜胞であるオートファゴソームが完成するというダイナミックなプロセスである。真核細胞のモデル生物である出芽酵母を用いてオートファゴソーム形成のメカニズムを解析する上での大きな問題点のひとつは、蛍光顕微鏡下に隔離膜を可視化できないことであった。 我々は、オートファゴソームの選択的積荷タンパク質アミノペプチダーゼIを過剰発現することで、出芽酵母において隔離膜を蛍光顕微鏡下に可視化する手法を開発し、隔離膜伸展の際にAtg1(autophagy-related 1)が複数の準安定状態を経て隔離膜形成に関わっていることを見いだした(Suzuki et al. J. Cell Sci. (2013))。隔離膜上における他のAtgタンパク質の局在を観察したところ、隔離膜と液胞膜との接点(vacuole-IM contact site; VICS)に局在するもの、VICSと隔離膜に局在するもの、隔離膜の縁に複数のドットを形成するものの三つのグループに分かれた。小胞体と隔離膜との位置関係を確認したところ、小胞体が隔離膜と複数の箇所で接している様子が観察された。小胞体からゴルジへの輸送を担っているCOPII小胞は小胞体上のER exit site(ERES)で形成される。ERESと隔離膜との位置関係を観察したところ、複数のERESが隔離膜と接していることが分かった。Atg2-Atg18複合体は隔離膜上で複数のドットとして観察される。Atg18とERESとの位置関係を確認すると、隔離膜上のAtg18にERESが接している状況が極めて高い頻度で見られた。 本研究により、オートファゴソーム形成におけるAtgタンパク質の作用部位に関する新たな知見が得られたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オートファゴソーム形成時に過渡的複合体を形成するAtg1複合体の局在に関わる論文を発表できた。
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今後の研究の推進方策 |
タンパク質キナーゼであるAtg1の酵素活性が隔離膜の大きさを規定していることが明らかとなった。加えて阻害剤を用いてAtg1の活性を制御する手法を開発することに成功した。これらの結果に基づき、Atg1の標的となる基質タンパク質を同定することで本研究のさらなる発展を目指す。
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