研究領域 | 過渡的複合体が関わる生命現象の統合的理解-生理的準安定状態を捉える新技術- |
研究課題/領域番号 |
24121708
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
清水 重臣 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (70271020)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | アポトーシス / ネクローシス / ミトコンドリア / bax / bak |
研究実績の概要 |
ミトコンドリア膜には、細胞死を制御する膜透過調節装置が少なくともに2種類(アポトーシス誘導装置とネクローシス誘導装置)存在しており、細胞死が実行される際には、これらの膜透過調節装置が細胞死のon/offのスイッチとなっている。そこで、本研究では、このようなミトコンドリア膜透過調節装置を構築している分子複合体の構造学的、分子生物学的解析を行い、以下の結果を得た。 (1)単離ミトコンドリアを用いて、アポトーシス時とネクローシス時のミトコンドリア膜の形態変化を電子顕微鏡にて観察した。その結果、ネクローシスの時には、1、膜間スペースやクリステの膨潤、2、ミトコンドリアの破裂、3、外膜の破壊、が生じていた。一方、アポトーシスの時には、1、外膜の膨潤に引き続く膜間腔の開裂、2、ミトコンドリア外膜にブレブ様の構造物の形成が観察された。 (2)アポトーシス誘導時には、BaxあるいはBakに構造変化が生じ、多量体化することが知られている。そこで、多量体形成の可視化を高感度蛍光顕微鏡にて行ない、膜透過性の亢進には少なくとも10分子以上のBax(Bak)が必要であることが判明した。また、この構造変化に伴って大きく構造変化する領域のアミノ酸同定に成功した。 (3)酵母の遺伝学解析を行い、新規の4種類の蛋白質が、アポトーシス時のミトコンドリア膜透過性亢進装置に関わっている事を見出した。 (4)原子間力顕微鏡を用いて、ミトコンドリア膜の構造変化を観察した結果、アポトーシス時には、1、外膜の一部にブレブ様の構造物が形成されている事、2、一部の膜では、膜のインテグリティに破綻が生じている事、が判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アポトーシス、ネクローシス時のミトコンドリア膜形態を電子顕微鏡解析、原子間力顕微鏡解析により成功させている。また、超高感度蛍光顕微鏡を用いて、アポトーシス孔の捕捉にも成功しており、今後これらを組み合わせることによって、アポトーシス孔の最終的な構造決定ができるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、超高感度蛍光顕微鏡によって、アポトーシス孔の同定ができている。同じ場面を電子顕微鏡を用いて観察することにより、アポトーシス孔とミトコンドリア膜の位置関係を明確にできる。さらに、開口しているアポトーシス孔を認識できる抗体を用いて、超高感度蛍光顕微鏡解析と電子顕微鏡解析を行なうことにより、最終的な結論を得ることができる。
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