公募研究
細胞内外の情報や物質のやり取りを行う”膜タンパク質”は、生命活動に重要である。我々は、光受容体・ロドプシンと伝達膜タンパク質の“膜分子複合体の過渡的変化”を様々な手法により解析している。このうち、赤外分光 (FTIR) 法やラマン分光法に代表される振動分光法は、分子振動を鋭敏に捉える手法で、側鎖, 主鎖, 低分子(イオンや水など)の微細構造変化を捉えることができ、X線結晶構造解析やNMR解析では得ることが難しい情報を取得することができる。本研究では以下の4点について研究を行い、成果を得た。本研究を通じて、膜蛋白質解析のボトルネックである、試料調製法や解析手法を確立できたと考えている。1) 低温トラップ型FTIR法 [Reissig et al. 2012, Biochemistry]2) 時間分解FTIR法 [Furutani et al. 2013, J. Phys. Chem. B]3) ラマン分光法 [Furutani et al. 2013, J. Phys. Chem. B]4) 全反射型FTIR法におけるイオンと膜タンパク質の相互作用解析を行い、解析の難しい膜タンパク質の微細構造変化を明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
これまで解析の難しかった以下の課題に挑戦し、成果を挙げた。1) 低温FTIR法により、イオン脱着に伴う水素結合変化を同定。高波数領域に測定域を拡大。2) これまで限られた分子にのみ適用されていた時間分解FTIR法を、我々が発見した新規膜タンパク質に適用し、特殊な構造変化を見出した。3) 上記分子のラマン分光測定を行い、FTIRでは得られない相補的な情報を得た。4) これまでほとんど行われていない他の膜タンパク質分子での測定を行い、一定の成果を得た。
今後も引き続き、赤外分光法(FTIR)とラマン分光法を車の両輪とした解析を行う。試料調製法についてはこれまでの研究で大きな進展があり、それを生かした試料の最適化と測定法の最適化を組み合わせ、他の手法では得られない情報の取得を引き続き行う。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 7件) 図書 (1件)
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