研究領域 | 過渡的複合体が関わる生命現象の統合的理解-生理的準安定状態を捉える新技術- |
研究課題/領域番号 |
24121716
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
七田 芳則 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60127090)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 構造変化 / ロドプシン / 蛍光プローブ / 平衡 / 過渡的複合体 / ダイナミクス |
研究実績の概要 |
交付申請書に記載の実験計画に沿って、下記の実験を行った。 ①天然ロドプシンのCys316をAlexaで蛍光ラベルすると、1分子レベルで構造変化を検出できることを示してきたが、錐体視物質や構成的活性変異体で同様の解析を行うためには、培養細胞系で発現させた視物質を用いる必要がある。そこで発現ロドプシンに従来と同様の方法で蛍光ラベルを導入したところ、Cys140にもAlexaが結合し、バックグラウンド蛍光が高まるために測定精度が低下することがわかった。これは、網膜由来のロドプシンとは膜成分などの環境が異なるためであると考えられたため、いろいろなラベル化条件を検討したが、Cys316を特異的にラベルすることができなかった。そこでロドプシンのC140S変異体を作成したところ、発現ロドプシンを効率よくAlexaラベルすることに成功した。 ②ロドプシンとG蛋白質との過渡的複合体形成を1分子で測定するため、FRETを1分子測定することを試みた。蛍光ラベルしたG蛋白質のC末端ペプチド(11 残基)と、別の蛍光色素でラベルしたロドプシンを用い、過渡的複合体生成にともなうFRETを1分子計測するための測定条件の最適化を試みたが、蛍光バックグラウンドを1分子計測が可能な程度まで抑えると試料濃度が希薄となり、結合を観測することができなかった。そこで25年度は、ロドプシンのC末端部にGタンパク質のC末端ペプチドを結合させたフュージョン蛋白質を作成し、複合体形成を観測することを計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ロドプシンの構造平衡を1分子レベルで検出することを示してきたが、学会などでは計測ノイズによる構造変化の誤検出が問題であると指摘されてきた。そこで、解析結果を統計的に検討することで誤検出の頻度を定量化し、構造変化の頻度がリガンドの状態によって有意に変化することを示すことができた。また、技術的な困難が予測された発現ロドプシンのラベル化の方法にも見通しが立ったので、本研究はおおむね順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ロドプシンには化学修飾が可能なシステイン残基が2個あるが(Cys140とCys316)、網膜由来のロドプシンではそれぞれの溶媒露出度が異なるため、量比を調節することでCys316を特異的に修飾することが可能であった。しかし培養細胞系に発現したロドプシン試料ではCys140とCys316の両方が修飾されたため、蛍光バックグラウンドが高まり精度の高い測定が困難であった。しかし、Cys140をSerに置換することにより、発現ロドプシンでもCys316を特異的に修飾することが可能になったので、今後はC140S変異体をテンプレートとして用いることで、変異体の解析が可能であると期待される。また、ロドプシンとG蛋白質のC末端ペプチドとでは濃度が低すぎて複合体形成がみられなかったが、フュージョン蛋白質を作成することで解決することを試みる。
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