交付申請書に記載の研究計画に沿って、以下の実験を行った。 ①我々はCys316を蛍光色素Alexaでラベルした天然ロドプシンを実験材料にして、1分子レベルでのロドプシンの構造変化を解析し、リガンドの違いや有無により構造変化のダイナミクスが異なることを明らかにした。そこで、本年は同様の構造変化がアミノ酸変異を加えたロドプシンでも観測されるかを検討した。前年度までに確立した方法を用いて、培養細胞系で発現させたロドプシンの構成的活性変異体(M257Y)をAlexaでラベルし、1分子解析した。その結果、M257Yでは、暗状態(インバースアゴニスト結合状態)での活性構造の生成は抑制されているが、リガンドと結合していない状態での活性構造の生成頻度が、野生型に比べて大幅に上昇していることが示された。これは、活性構造と不活性構造との間の平衡が、変異によって前者にシフトしたことを示唆しており、ロドプシンの構成的活性変異体でも二状態モデルで説明できることがわかった。 ②24年度は蛍光ラベルしたGタンパク質のC末端ペプチドと、別の蛍光色素でラベルしたロドプシンの活性状態との過渡的複合体形成を1分子FRETで観測することを試みた。しかし、1分子計測の系では試料濃度が希薄なため、結合を観測するまでには至らなかった。そこで、本年度はロドプシンのC末端部にGタンパク質のC末端ペプチドを結合させた融合蛋白質を数種類設計し、C末端ペプチドがロドプシン部分に効率よく結合するコンストラクトを検討した。その結果、高親和配列を含んだGタンパク質のC末端20残基を融合させると、この部位がメタ中間体に結合し、平衡が活性構造(Meta-II)にシフトすることが示された。今後は、ロドプシン部分とGタンパク質部分を別々の蛍光色素でラベルして一分子計測することにより、構造揺らぎとGタンパク質結合能の相関を検討する。
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