研究領域 | 過渡的複合体が関わる生命現象の統合的理解-生理的準安定状態を捉える新技術- |
研究課題/領域番号 |
24121718
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
清中 茂樹 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (90422980)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | カルシウムチャネル / エピジェネティクス / 神経活動 / 過渡的複合体 |
研究実績の概要 |
我々は電位依存性Ca2+チャネルβ4サブユニットとB56δ(プロテインホスファターゼ2A副サブユニット)との相互作用を明らかにしてきた。本年度は、β4サブユニットとB56δの過渡的複合体形成の確認を行うべく、それらの相互作用がどのような条件下で引き起こされるのかについて評価した。HEK293細胞の組換え発現系を用いて、特に電位依存性Ca2+チャネルの活性化を誘導するhigh K+(脱分極)刺激に伴うβ4サブユニットとB56δとの結合を生化学的に評価した。その結果、high K+刺激後にβ4サブユニットとB56δの相互作用が劇的に増大することを確認できた。すなわち、電位依存性Ca2+チャネルの活性化を引き起こす神経活動に伴いβ4サブユニットとB56δが相互作用することが示唆された。 次にどのような機構で核に移行するのかを評価した。特に、電位依存性Ca2+チャネルを経由して流入したCa2+が重要なのか、それとも脱分極に伴う電位依存性Ca2+チャネルの 構造変化が重要なのかに焦点をあてて評価した。上記のHEK293細胞を用いた実験系を用いて実験を行ったところ、細胞外のCa2+が存在すると脱分極に伴うβ4サブユニットとB56δの相互作用が確認されたのに対して、細胞外のCa2+をEGTAでキレートしておくと、その相互作用は確認できなかった。すなわち、電位依存性Ca2+チャネルを介して流入したCa2+によって、電位依存性Ca2+チャネルからβ4サブユニットが離れてB56δと相互作用すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の成果から、β4サブユニットとB56δとの相互作用が、電位依存性Ca2+チャネルの活性と深く関連していることを確認できた。また、その相互作用が電位依存性Ca2+チャネルの構造変化によるものではなく、Ca2+チャネルを介して流入してきたCa2+によって引き起こされることも確認できた。これらの結果から、当初の計画通り、β4サブユニットとB56δとの相互作用の分子メカニズムを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、β4サブユニットとB56δとの過渡的複合体形成により引き起こされる生理現象を明らかにして行く予定である。具体的には、DNAマイクロアレイやRT-PCRを用いて、β4サブユニットによって転写制御される遺伝子の解析を行う。転写制御される遺伝子が同定できたら、β4サブユニット複合体がその遺伝子上流に結合しているかどうかをクロマチン免疫沈降法を用いて評価する。結合が確認できた場合は、どのような分子メカニズムで複合体を形成しているのかを明らかにする予定である。
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