研究概要 |
動的複合体状態は生命現象を理解する上で極めて重要であるが、原子レベル精度でそれらを解析するのは未だに困難である。特に膜蛋白質では足場としての膜自身の役割が大きく、in situでの動的複合体の解析が必須と考えられる。そこで本研究では膜蛋白質複合体を生きている細胞のまま原子レベル精度で解析可能なNMR技術を開発する。具体的には、生きている大腸菌で相互作用を観測したい膜蛋白質のみを安定同位体標識する技術を開発し、生きている細胞へDNP法を適用して測定感度を大幅向上させることで、in situで膜蛋白質問の動的相互作用を原子レベル精度で解析する。 平成24年度は、生きている大腸菌で相互作用を観測したい膜蛋白質のみを安定同位体標識する技術を開発した。生きている細胞のまま膜蛋白質を検出するには、生きている細胞に安定同位体を取り込ませ、膜蛋白質のみを安定同位体標識する技術が不可欠である。そこで2回膜貫通型蛋白質pHtrIIの大腸菌大量発現系において、培養時に非標識培地を、誘導時に安定同位体標識培地を用いることで、観測したい膜蛋白質のみを安定同位体標識することとした。従来法では,バックグラウンドとなる大腸菌由来の目的膜蛋白質以外のNMR信号が検出され、大きな問題となっていた。そこで、バックグラウンドとなる目的蛋白質以外の新規蛋白質合成を完全に阻害することが可能な大菌のSPPシステムを用いることで、目的膜蛋白質のみを安定同位体標識することに成功し、生きている大腸菌での観測にも成功した。
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