(1) 高い光反応性を持つケージド化合物:1光子励起および2光子励起で高い光反応性が期待される新規ケージド化合物を設計・合成した。生細胞内で任意のタンパク質をラベル化可能な,新しいケージドフルオロフォアとして,Bhcmoc-fluorescein-Haloの合成に成功した。 (2) 核酸のケージド化合物の高機能化:任意の遺伝子の機能発現または機能抑制を,高い時空間分解能で光制御する手法開発を目的に研究を行った。あらかじめ調製したプラスミドDNAやmRNAを,適切に設計したケージング試薬との反応でケージド化合物に変換できれば,実用的な実験手法になりうると期待される。そこで,様々な機能を容易に導入できる核酸のケージング試薬を新たに開発して従来法の問題点の解決を図った。精製用のビオチンタグ付きのケージング試薬Bio-Bhc-diazoを利用して,ケージングしたdsDNAを精製できること,紫外光照射でBio-Bhc基を脱保護できることを確認した。さらに,Bio-Bhc-caged dsDNAを用いて,哺乳動物培養細胞内で,遺伝子の機能発現を光制御できることを明らかにした。 (3) 過渡的複合体の時空間動態を光制御する多機能性ケージド化合物:ケージド化合物の有用性を高めるため,多様な機能を容易に導入可能なケージンググループを開発した。また,グルコース修飾したケージドパクリタキセル2’-Glc-paBhcmoc-PTXは水溶性と光反応性が大きく向上することを明らかにした。アラキドン酸のケージド化合物paBhcmoc-arachidonic acidは,DGKの細胞内動態を光制御可能であることも明らかにした。
|