研究領域 | ネアンデルタールとサピエンス交替劇の真相:学習能力の進化に基づく実証的研究 |
研究課題/領域番号 |
25101702
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
杉浦 元亮 東北大学, 加齢医学研究所, 准教授 (60396546)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 神経科学 / 認知科学 / 脳・神経 |
研究概要 |
飽きは繰り返される刺激や作業によって、行為・状況の意義を見出せなくなったときに感じる特有の負の感情である。この飽き感情への対処戦略として、我々は外的状況あるいは内的状況(自分の精神状態)を変える行動を取る。飽き感情やこういった飽き対処戦略は、ホモ・サピエンスの創造性や学習能力を説明する精神活動の有力候補と考えられる。本研究では健常成人被験者を対象に機能的MRI(fMRI)を用いた脳マッピング研究を行い、飽き感情と飽き対処戦略の神経基盤を明らかにした。46名の健常大学生被験者を対象とし、MRI中で写真や絵画などの視覚刺激を鑑賞する課題(4秒間)と、その刺激に対する飽き感情の程度を4段階評価する課題(1秒間)を交互に繰り返させた。評価課題で被験者が1~3を選んだ場合は続く鑑賞課題で同じ画像を提示し、4を選択した場合は50%の確率で新しい画像を提示した。ある視覚刺激に対して最初に4と評価した直前の鑑賞課題では外的状況(刺激)を変更する戦略の影響が、2回目以降の4評価では内的状況の変更(飽きに耐える)戦略の影響が優位と仮定した。飽き対処戦略に関する脳活動が外的状況の変更と内的状況変更と共通して上前頭回内側、前帯状皮質、右前頭極、後帯状皮質に同定され、外的状況の変更戦略特異的に左頭頂間溝、内的状況の変更戦略特異的に両側中側頭回が同定された。共通に活動した内側前頭前野・前帯状皮質・右前頭極・後帯状皮質は将来の出来事のシミュレーションに関わることが知られている。外的状況、内的状況の変更戦略特異的に活動した左頭頂間溝、中側頭回はそれぞれ視空間運動制御、意味表象への関与が知られている。変更戦略の外的・内的に関わらず、飽き対処戦略に将来の出来事のシミュレーションと類似の処理が関与することは、飽き感情への対処自体が、ホモ・サピエンスの創造性や学習能力を説明する上で重要である可能性を示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ100%、研究実施計画に則って計画が実施でき、期待する結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
ここまでのデータ解析は、全被験者で共通にみられる脳活動を対象とし、活動の個人差はノイズとして扱っている。今後は実験前後に実施した質問紙調査・認知テストで得られている個人特性データを整理し脳活動との相関を解析する。脳機能イメージングの一般的なデータ解析アプリケーションであるSPM8を用いて、各被験者における脳活動推定値画像と個人特性データを用いて、単回帰・重回帰分析を行う。得られた結果(有意な相関を示す領域)について、先行知見の文献的調査に基づいて解釈し、ホモ・サピエンスの学習能力や創造性を説明する精神活動について考察する。また、得られた研究成果について学会発表と論文執筆・投稿を行う
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