研究領域 | ネアンデルタールとサピエンス交替劇の真相:学習能力の進化に基づく実証的研究 |
研究課題/領域番号 |
25101705
|
研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
早川 敏之 九州大学, 基幹教育院, 准教授 (80418681)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | ヒトの進化 / シアル酸 / 精神疾患 / 受容体 / 学習 |
研究概要 |
世代を越えて文化や文明を伝えていくホモ・サピエンスには、コミュニケーションによる集団社会での学習が重要である。そして、集団社会での学習に関わると考えられる精神疾患に、他者とのコミュニケーションに障害が生じる統合失調症があげられる。この統合失調症に関わると見られる分子に、Siglec-11がある。 Siglec-11は、細胞表面糖鎖末端に位置する単糖であるシアル酸を認識する受容体であり、ヒト特異的に脳ミクログリアでの発現を獲得し、神経保護機能をもつ。Siglec-11のヒト特異的な脳での発現獲得は、サピエンス(新人)とネアンデルタール人(旧人)の分岐の直前であり、神経保護による統合失調症のリスク回避が、新人や旧人の集団としての学習能力に関与している可能性がある。 Siglec-11の進化を詳細に調べたところ、Siglec-11は、Siglec-11と同じ脳ミクログリアのシアル酸受容体であるSiglec-16とペアを組み、細胞機能を微調整するペア型受容体として働いていることがわかった。このため、Siglec-16もSiglec-11と同様、統合失調症に関わっていると見られる。以上のことから、Siglec-11のヒト特異的な脳ミクログリアでの発現獲得は、ヒト特異的なSiglec-11/Siglec-16ペア型受容体の獲得を意味し、このヒト特異的な脳内ペア型受容体は、集団としての学習能力に関わっているかもしれない。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的や研究計画に記した通り、平成25年度はSiglec-11遺伝子のヒト世界集団での配列決定を進めた。一方で、Siglec-11の進化の解析から、Siglec-16についても検討する必要が生じてきたため、配列と機能の両面から解析を行い、ヒト特異的なSiglec-11/Siglec-16ペア型受容体の獲得と統合失調症の関係という新たな視点を得ている。当初の計画に加え、より多面的な研究を進め結果を得ていることから、順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度は研究計画通り、ヒト世界集団でのSiglec-11遺伝子配列の決定とその集団遺伝学的・分子進化学的解析を進める。一方当初はSiglec-11とSiglec-16との密接な進化の情報がなく、Siglec-11のみを対象として研究を行う予定であった。しかし、Siglec-11とSiglec-16がペアで働くペア型受容体であることが判明し、Siglec-16と統合失調症との関係も期待されることから、解析対象にSiglec-16を含めることとしている。
|