本研究の目的は、人類進化の最終段階において誕生した芸術が、どのようなメカニズムで人類社会の発展に貢献したのか、数理モデルによる分析と、現代の芸術の現場での調査を通じて明らかにすることである。本年度は以下の研究をおこなった。 1)数理モデル:昨年度に作成したエージェントベースモデルの発展をおこなった。全体としての人口密度が低く、他集団とのランダムな交流が困難になると、一部のエージェントが交流促進に特化し、かつ他のエージェントが地域特異的な技術を産み出すことに特化するプロセスをコンピューター上に再現した。成果はCAA2014(パリ)、RNMH2014(伊達市)という国際学会大会などで発表し、現在は2014年の交替劇報告書に掲載した論文を発展させ、国際詩への論文を執筆中である。 2)調査:昨年度に引き続き、奈良県で開催された「奈良・町屋の芸術祭(はならぁと)」への参与観察、関係者への聞き取り調査をおこなった。芸術祭が回を重ねるごとに、より多様な人間を巻き込むことで、芸術祭が地域文化として受け入れられていくプロセスを明らかにした。成果は2015年の交替劇報告書に掲載し、かつ社会学系の論文として発展させたものを執筆中である。 3)その他:低密度環境下において多様な人々が集まることで文化蓄積や環境保全がおこなわれる仕組みについて、3本の査読論文を発表した。
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