設計したマグネトロンスパッタリング装置を用い、そのチャンバー内に直接液状高分子や樹脂モノマー液を導入し、また場合によっては、添加剤となる金属錯形成物質を導入して無機ヘテロ元素ブロックとしての金属ナノ粒子・金属酸化物ナノ粒子の直接合成を試みた。これをマトリックススパッタリング法と名付けた。 ナノ粒子の粒子径制御には、金属配位化合物の利用が効果的である。液体マトリックス中にチオールなどの金属配位化合物を導入することによりナノ粒子の粒子径制御が可能であることを見出している。一方で、液体マトリックスとは別に、やや揮発性の高いチオール分子をチャンバー内に入れ、チャンバーのガス雰囲気にチオール分子を導入することによっても、ナノ粒子の小粒径化に成功した。このとき、得られたナノ粒子の量子収率は極めて高かった。一般に金ナノ粒子の発光量子収率は1-2%程度であるが、この手法で得られた金ナノ粒子は、10%を越える量子収率を示すものも多く、最大で16%にも達した。これは、チャンバー雰囲気にチオール分子を導入することにより、クラスター状態でナノ粒子がチオールに覆われ、スパッタリング液表面でそれらが凝集したものをナノ粒子として回収しているからと考えられる。そのため、金錯体のような高い量子収率を示しながら、安定にその発光特性を維持できる金ナノ粒子を合成できたことになる。極めて興味深い実用的な材料である。 金属酸化物ナノ粒子の合成では、チタニアの樹脂内への導入について議論を行ってきたが、酸素欠損型のチタニアが多く得られる場合があった。 また、共同研究の大きな成果としては、銅-パラジウム合金ナノクラスターをDMFを還元剤として用いて可能とした。このとき、この合金クラスターは固溶体構造を取っていることがXPSより示唆された。また、発光量子収率も金属組成によって変化することが示され、興味ある合金素材となった。
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