研究領域 | 元素ブロック高分子材料の創出 |
研究課題/領域番号 |
25102502
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中村 貴義 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (60270790)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 誘電性 / 磁性 / 超分子構造 / 分子ローター / ポリオキソメタレート |
研究概要 |
磁性を示す金属錯体を基本ユニットとするアニオンと、強誘電性を発現するカチオン性超分子ローター構造からなる元素ブロック階層構造を構築し、機能相関に基づく新奇機能性の開拓を行うことが、本研究の目的である。本年度は強磁性と強誘電性の共存を目指し、強磁性アニオンと分子回転運動が可能な超分子カチオンを組み合わせた階層性元素ブロック高分子の開拓を行った。また、アニオンとして巨大分子であるポリオキソメタレート(POM)をとりあげ、水素結合等の弱い相互作用を通じて分子ローター構造との階層構造の形成を目指した。特に単分子磁石などの機能性POM用いた系の構築を進めるため、ランタノイドサンドイッチ型POMの合成に着手した。 強磁性を発現する高分子錯体として[MnCr(oxalate)3]-アニオンを選択し、カウンターカチオンとしてと(m-fluoroanilinium+)(dicyclohexano[18]crown-6)超分子ローター構造を組み合わせることにより、強誘電性と強磁性の共存を目指した。超分子ローターとして、様々な構造の導入を試みたが、安定な結晶を得ることは難しかった。これは[MnCr(oxalate)3]-のハニカム構造の空孔に結晶溶媒が入り込み、それが容易に抜けてしまうためである。そこで、平面的なコンフォメーションを採りやすい、trans-syn-trans-dicyclohexano[18]crown-6 (DCH[18]crown-6)を新たに合成し、m-fluoroanilinium+と組み合わせて、[MnCr(oxalate)3]-結晶中に導入した。得られた結晶の構造の詳細を検討するとともに、物性評価を開始した。 また、ランタノイドサンドイッチ型POMとして[Ln(Mo8O26)2]5- (Ln = Gd、Tb、Dy、Ho、Er)クラスターを作製し磁気特性の検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
強磁性アニオンと分子回転運動が可能な超分子カチオンを組み合わせた階層性元素ブロック高分子の有望な系として、既に(m-fluoroanilinium+)(trans-syn-trans-dicyclohexano[18]crown-6)[MnCr(oxalate)3]-を得ることができた。結晶は強磁性を示し、さらに結晶内でのフッ素原子のディスオーダーが確認できた。しかしながら、強誘電転移の確認には至っておらず、今後の精査が必要である。 単分子磁石の有力候補として、[Ln(Mo8O26)2]5- (Ln = Gd、Tb、Dy、Ho、Er)を既に合成し、結晶構造を明らかにするとともに、予備的な磁性測定を行うことができた。まだ、単分子磁石としての物性評価には至っていないが、超分子ローター構造と組み合わせるには好適な系であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
既に(m-fluoroanilinium+)(trans-syn-trans-dicyclohexano[18]crown-6)[MnCr(oxalate)3]-という有望な系を見出すことができたので、この系について詳細な物性評価を進める。また得られた知見をもとに、他の超分子ローター構造の導入についても検討を進め、強磁性と強誘電性の共存を目指す。 また、[Ln(Mo8O26)2]5-については単分子磁石としての物性評価を急ぐとともに、超分子ローター構造との複合化を行う。さらに、他の単分子磁石についても複合化を進める。 さらに、領域内研究者が合成した有望な機能性元素ブロックについて、超分子ローター構造との複合化を進めるべく、共同研究の可能性を追求する。また、領域内研究者が合成した新たな材料について、構造・物性評価の面からサポートする形での共同研究についても模索する。
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