研究実績の概要 |
環状シロキサンの官能基をビニル基とした2,4,6,8-Tetramethyl-2,4,6,8-tetravinylcyclotetrasiloxane(TMVS)を用いて、ハイブリッドネットワークポリマー薄膜の検討を行った。ヒドロシリル化反応における触媒量をできるだけ少量とし、TMVSと二官能性モノマー1,1,3,3-tetramethyldisiloxane (TMS)の総モノマー濃度と混合比を調整し、トルエン溶媒中にてヒドロシリル化反応を行ったところ、混合比1:1にて、総モノマー濃度6mol/L以下の場合、トルエン、THF、クロロホルムなどの汎用性溶媒可溶なハイブリッドポリマー(TMVS-TMS)を得ることができた(収率~90%)。混合比1:2の場合ではゲル化が生じた。昨年度報告したTMCS環状シロキサンモノマーと比較すると、混合比の条件は同じであり、ポリマー合成条件の許容総モノマー濃度がTMVSの方で増加した。得られたハイブリッドポリマーについてSECにより分子量は高濃度条件で約4.5×10^6(ポリスチレン換算)と求められ、TMCS系よりも高分子量のものを得ることができた。1H NMRと29Si NMRにより未反応のCH2=CH-基が4.3(mmol/g)であり、TMVSがTMSと1:1で反応したと仮定した場合の計算値とほぼ一致すること、TMVSモノマー中の反応部位と未反応部位の割合がほぼ等しいことが分かった。以上よりTMVS-TMSは直鎖状をとったハイブリッドポリマーであると考えられる。このポリマーは、無色透明で液体状のハイブリッドポリマーであり、THFやクロロホルムなどの汎用溶媒に可溶であることからハンドリングが容易である。さらにCH2=CH-基の未反応部位がポリマー中に残存しており、薄膜の高性能化・高機能化に利用することが可能である。
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