シルセスキオキサンを無機部位とした両親媒性ハイブリッド材料を作製するために、疎水性のかご形シルセスキオキサン(POSS)の一片に親水性かつフレキシブルなジエチレングリコール鎖を導入した材料を設計し合成した。さらにジエチレングリコール鎖の末端の水酸基とエチルイミダゾールとを縮合することで水素結合部位となるカルバメート基を導入し、自己組織化が開始する駆動力となることを期待した。具体的には不完全縮合型のイソブチルトリシラノールPOSSを出発物質とし、トリクロロシランとの反応によりかご形構造を形成した後に、ジエチレングリコールを導入し末端にイミダゾールを導入したものである(POSS-IM)。POSSはその直径が1nm程度と非常に大きいため、これまでは高分子鎖を親水部位として導入した例がほとんどであったが、我々はジエチレングリコールのような短い親水鎖を用いても両親媒性POSSを合成できることを見いだした。POSS-IMをメタノールに分散させTEMグリッド状で乾燥させるとシート状に、一方ジクロロエタンに分散させた場合はリボン状に自己組織化することが分かった。またTHF/エタノール/水の混合液においてはベシクルを形成することがわかった。このように、溶媒を選択することでPOSS-IMが自己組織化による多様な形態に構造化することがわかった。続いてイミダゾール基の特徴を応用する目的として、薄膜のプロトン伝導度測定を行ったところ、加湿下において10-4 S/cmの伝導度を示し、イミダゾール部位がプロトン伝導部位として働くことが示された。この両親媒性ハイブリッド材料は分解温度が200度以上の耐熱性を示すため、耐熱性プロトン伝導膜として利用することが可能である。
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