研究領域 | 元素ブロック高分子材料の創出 |
研究課題/領域番号 |
25102507
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
鍋島 達弥 筑波大学, 数理物質系, 教授 (80198374)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 超分子化学 / 発光性錯体 / 外場応答性 |
研究概要 |
発光性錯体を元素ブロックに選び、これらを特異な三次元構造を取るように配列させることで、精密な構造と外部因子応答性をもつ機能性高分子の創製を目的に検討を行った。初年度はその基礎となる以下の配位子および錯体の合成を行った。 まず合成したのは、N2O2型ジピリンホウ素錯体(N2O2型BODIPY)にピリジンを配位部位として導入した分子である。この分子はピリジン部位と金属との錯形成、および添加するゲストによって発光部位を適当な距離をあけて配列させられると期待される。合成は、まず臭素置換ジピリン配位子をホウ素錯体とした後、触媒的カップリング反応を用いることで、ピリジン部位を有するBODIPY1を合成することができた。また金属配位部位として2,2’-ビピリジンをもつBODIPYの合成は、水酸基を有するBODIPYを経由することで達成できた。これらの合成経路を用いれば、共通する前駆体から様々な置換基を導入することができるため、今後、多様な元素ブロックの開発に利用できる汎用性の高い手法になると考えられる。さらに、1とはピリジンの置換位置の異なる化合物やチオフェン環をもつBODIPYの合成も行った。現在、これらのBODIPY誘導体を元素ブロックにした錯体高分子の合成を検討している。 その他、強い発光をもつシクロメタレートIr錯体を化学修飾し、元素ブロックとなりうる発光性Ir錯体を合成して外部因子応答性について検討を行った。例えば、Hgイオンを外部因子として発光特性が大きく変化するものや、非常に選択的にHOClに応答して、その検出にも利用できる応答性Ir錯体の合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目標とした複数のBODIPY類の合成に成功し、その基本的な光学特性について明らかにすることができた。得られたBODIPYの錯形成能についても予備的検討を行うことができ、本年度において精密な構造決定、高分子への展開について検討ができる段階となっている。 またIr錯体も2つの基本となる骨格を設計・合成し、外部因子に対して高感度、高選択的に光学特性が応答する優れたシステムの構築に成功した。細胞のイメージングに対しても応用可能であることも明らかにすることができた。このように、高機能な高分子の合成に向けて重要な基礎的な知見が種々得られるなど、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究を継続し、新規な元素ブロックの構築を以下の方針に従い行う。また、それらの元素ブロックを用いた高分子合成については、領域内の共同研究を積極的に行うことにより推進し、特に外場応答性を持つ機能性高分子の創製を目指す。 (1) 発光性錯体を元素ブロックとするラセン型高分子の創製: N2O2型のジピリン骨格にピリジンなどの複素環や水酸基、カルボキシル基などの官能基を導入した分子を種々合成し、それらをホウ素錯体へと誘導する。これらを元素ブロックに用い、配位結合やエーテル結合の形成、酸化的重合反応などを利用して、ラセン型高分子の合成法を開発する。得られた高分子の光化学的および電気化学的性質、さらにそれらに及ぼす外部因子の効果について調べ、応答性の機能をもつ高分子の合成を試みる。 (2) 発光性錯体を元素ブロックに用いた多元応答性MOFの創製: 2,2'-ビピリジンをリンカーとしてN2O2型のジピリン骨格を連結した分子、およびビピリジンをメソ位に導入した分子などを合成し、高分子合成への展開を検討する。
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