アゾベンゼンの片側または両側に、チオール・エン反応によって柔軟なスペーサーを介してアルコキシシリル(-Si(OEt)3)基を導入することで、シロキサン形成能を有する新規アゾベンゼン誘導体を合成した。アルコキシ基をTHF溶媒中で加水分解した後、溶液をガラス基板上に塗布することで、自己集合によりラメラ構造を有する薄膜が得られた。アゾベンゼンの片側にアルコキシシリル基が結合した分子より得られた薄膜は、光照射によって部分的ではあるが可逆的なtrans-cis異性化を示した。また、光異性化に伴って構造周期も変化したが、より短いスペーサーを有するラメラ薄膜(H25年度報告)よりも大きくかつ迅速な変化が達成された。さらに、二種類の分子を混合することによって自己支持性のフィルムが得られ、光照射によって可逆的に屈曲する挙動が確認された。 一方、有機シリル化によるメソポーラス有機シリカナノ粒子の合成についても検討を行った。シリカ-界面活性剤メソ複合体ナノ粒子の水分散液中にフェニルトリアルコキシシランを添加することにより、粒子の片側にのみ有機シリカシェル形成が起こり、ヤヌス型の粒子が形成される現象を見いだした。さらに、シリカ(SiO2)部分とフェニルシルセスキオキサン(PhSiO1.5)部分の溶解性の差を利用することにより、シリカ部分だけが選択的にエッチングされた、お椀型のフェニルシロキサンナノ粒子を得ることにも成功した。このような異方的な形状を有する粒子は、自己集合など特異な性質を示すことが期待される。フェニル基の代わりに光応答性の有機基を導入することにより更なる機能化も期待できる。
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