研究領域 | 元素ブロック高分子材料の創出 |
研究課題/領域番号 |
25102515
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
伊津野 真一 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50158755)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | キラル元素ブロック / 不斉触媒 / 高分子触媒 / 両親媒性高分子 / 第四級アンモニウム塩 / 高分子固定化 / 有機分子触媒 / 遷移金属触媒 |
研究概要 |
キラリティーを有する元素ブロックが不斉触媒活性を示す場合、その高分子化は、不斉触媒の反応系からの分離や再利用性が著しく向上するばかりでなく、触媒活性部位の構造を詳細に制御することができ、低分子触媒では見られなかった高選択性や高反応性を示す可能性がある。しかし一般には、触媒の高分子化は、反応媒体への不溶化を伴うことが多く、不均一反応により触媒活性の低下を引き起こすことが多い。本研究では、第四級アンモニウム塩構造を導入した高分子触媒を合成することにより、両親媒性を利用して有機溶媒および水中でも十分に高い活性を保つキラル高分子触媒の開発に成功した。 キラル第四級アンモニウム塩を主鎖に組込んだ高分子の合成法として、溝呂木-Heck反応を利用する重合法を開発した。重合反応はDMF中で進行し、数平均分子量14000~37000程度のキラル高分子を合成した。得られたキラル高分子は第四級アンモニウム塩構造を繰り返し単位として有しており、両親媒性的性質を持っている。相間移動触媒としての性能を有しており、水-有機溶媒系での不斉反応に威力を発揮することを確認した。 次に、キラル遷移金属触媒の高分子化を検討した。両親媒性キラル高分子触媒が有機分子触媒で高活性を示したことから、遷移金属触媒においても高分子構造に第四級アンモニウム塩構造を導入した。この両親媒性高分子に組込まれたキラル遷移金属錯体は、高反応性を示すだけでなく、不斉選択性においても低分子の錯体を上回る選択性を示すことを確認した。両親媒性高分子に組込まれた反応場が、より適切な不斉ミクロ環境を構築しているものと考えられる。高分子触媒を回収して再利用することもでき、数回にわたる再使用実験では、触媒活性野低下は全く見られることがなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
不斉触媒能を有するキラル元素ブロックを高分子化する方法について検討を行った。有機分子触媒および遷移金属触媒を元素ブロックとする高分子化に取り組んだ。有機分子触媒については、シンコナアルカロイドのC-C二重結合とヨウ化アリールとの溝呂木-Heck反応を利用した高分子合成法を開発した。この重合法は、共役系高分子の合成法として利用された報告はあるが、キラル高分子触媒の合成例は本研究が初めてである。シンコナアルカロイドのC-C二重結合はチオール-エン反応、ヒドロシリル化反応などが容易に進行し、S、Siなどを含むキラル元素ブロックの合成も可能であり、検討中である。 遷移金属錯体触媒としてIrを含むキラル高分子触媒の合成に成功した。高分子化有機分子触媒出得られた知見をもとに、両親媒性官能基を側鎖に有する高分子を用いることで、遷移金属錯体触媒の性能を向上させることに成功した。得られた高分子触媒は、低分子と同等の反応性を維持しつつ、低分子触媒の選択性を上回るこう立体選択性を達成することができた。両親媒性高分子に組込まれた反応場が、より適切な不斉ミクロ環境を構築しているものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、シンコナアルカロイド類の第四級アンモニウム塩の高分子化により、有機分子触媒としての性能を向上させる可能性を見出した。また、シンコナアルカロイド分子の化学修飾は触媒活性に影響を与える。シンコナアルカロイド分子は様々な官能基を有している。この中で、C-C二重結合部位の化学修飾は、不斉触媒活性に与える影響が大きいことを突き止めた。次の方法により、S, およびSi原子を含むキラル元素ブロックの合成を行う。 (1) C-C二重結合のヒドロシリル化反応によりSi-C-C-構造を導入する。(2) C-C二重結合のチオール-エン反応により、S-C-C-を導入する。(3) C-C二重結合部位を三重結合に変換し、ヒドロシリル化反応を行うことによりSi-C=C-構造を導入する。(4) C-C二重結合部位を三重結合に変換し、チオール-エン反応を行うことによりS-C=C-構造を導入する。(5) C-C二重結合部位を三重結合に変換し、アセチレン型CHをメタル化し、クロロシランとの反応で三重結合に直接Siを結合する。(6) 上記で得られるS, およびSi原子を含むキラル元素ブロックを高分子化する。(7) 高分子化されたキラル元素ブロックの触媒活性について不斉反応を用いて評価する。
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