研究概要 |
高分子粒子は様々な分野で応用されており、一般的には乳化重合や懸濁重合によって合成されている。しかしこれらの方法では真球状の粒子しか得られず、それ以外の多様な形状をした粒子を合成するための研究は少ない。合成条件を調整することで、サイズや形状を制御した配位高分子の結晶を用意し、それを鋳型として用いることで、ホストPCPのモルフォロジーを反映した高分子粒子を合成することを試みた。[Zn2(1,4-bdc)2(dabco)]n (1) (1,4-bdc = 1,4-benzenedicarboxylate, dabco = 4-diazabicyclo[2.2.2]octane)においては、反応温度や時間を調整することで直方体状、ロッド状、六角柱状の1の結晶が得られる。スチレン (St)と重合開始剤を1の細孔内に導入し、窒素雰囲気下、70℃で加熱することでラジカル重合を行い、複合体 (1-PSt)を得た。SEM測定よりStの重合後も、1-PStがホスト錯体の形状を保持していることを確認した。次にキレート剤であるNa-EDTAの水溶液を用いて、1-PStから1の骨格を除去し、PStを単離した。TG測定よりバルクで重合したPStと同様の質量減少が見られること、XRD測定から1に対応するピークが見られなかったことより1を完全に除去できていると判断した。SEM画像より、単離したPStはそれぞれホスト錯体の形状を反映していることがわかった。また、St以外のビニルモノマーを使用してもStのときと同様にホスト錯体のモルフォロジーを反映した高分子粒子を得られた。単離した高分子が粒子を形成する条件や、粒子内での高分子鎖の運動状態についても検討を行った。
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