研究領域 | 元素ブロック高分子材料の創出 |
研究課題/領域番号 |
25102523
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
三木 康嗣 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60422979)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 高分子合成 / ケイ素 / ホウ素 / イメージング |
研究概要 |
ケイ素を含む元素ブロックであるシリコンナフタロシアニン(SiNc)の効率良い合成手法を確立するとともに、置換基を持つ新規なSiNcの合成を行った。SiNcの化学修飾法として、軸配位子に官能基を導入する手法およびSiNcのナフタレン環上に官能基を導入する手法の二つを確立することができた。特に後者では、クロスカップリング反応により、効率良くチエニル基をSiNcに導入できることを示した。得られたSiNcの吸収波長が、修飾前とほとんど変化しないことから、この化学修飾法が強い光音響信号を発する造影剤の構築に適していると期待される。 一方、領域内共同研究により、ホウ素を含む元素ブロックであるピロロピロールアザBODIPY(PPAB)の合成法とその化学修飾法を確立した。PPABは、クロスカップリング反応を用いることにより、効率良くそのパイ共役系を拡張させることに成功した。またこの化学修飾法を用いることにより、近赤外領域に吸収と発光を示す色素へと変換することにも成功した。 ヤヌス型多糖類縁高分子を合成し、これらが超音波照射により粒径の整った自己集合体を形成することを明らかにした。特に超音波の周波数が粒径の整った自己集合体の形成に有効であることを示した。異なる粒径の高分子自己集合体を担癌マウスに投与することにより、粒子の大きさが腫瘍への集積性に与える影響も明らかにした。これらの成果は学術誌に投稿し、受理されている。 ヒアルロン酸に近赤外色素元素ブロックであるインドシアニングリーンを結合させ、これが形成する高分子自己集合体が蛍光および光音響信号を効率良く発することを明らかにした。また、これらを担癌マウスに投与し、光および光音響腫瘍イメージングの優れた造影剤になりうることを明らかにした。これらの成果は特許として出願中であり、また論文を作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定した計画では、昨年度において、官能基化されたシリコンナフタロシアニンの合成とその光音響信号の測定を目標とした。実際に官能基化されたシリコンナフタロシアニンの合成法を確立し、その光音響信号の発生も確認している。このことは当初予定した計画を順調に推進できたことを示している。 これに加え、領域内共同研究を推進し、ホウ素を含む元素ブロックであるピロロピロールアザBODIPYの造影剤としての応用にも着手し、その合成、化学修飾法を確立した。また、特異な自己集合体形成能を示す両親媒性ヤヌス型高分子を合成し、これに近赤外色素元素ブロックであるインドシアニングリーン(ICG)を結合させることで、10分程度で腫瘍を可視化できる高性能な造影剤となりうることを示した。さらに、ICGを結合したヒアルロン酸を合成し、これが光および光音響造影剤として機能することを明らかにした。 このように当初予定した計画に加え、領域内共同研究と元素ブロックを用いる腫瘍イメージングに関する二点の成果を挙げており、当初計画以上に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究において、置換基を有するシリコンナフタロシアニン(SiNc)およびピロロピロールアザBODIPYの合成を達成した。これを踏まえ、本年度は置換基として血中滞留性や腫瘍集積性の向上に寄与するポリエチレングリコール(PEG)を採用し、PEG化されたSiNcやPPABの合成を行う。またこれらが示す発光特性や光音響信号の発生効率を明らかにする。また、研究代表者が独自に開発した手法を用い、多糖もしくは多糖類縁体にこれらの色素を結合させ、腫瘍集積性を示す高分子自己集合体を開発する。これらの形状、安定性、シグナル強度を明らかにし、PEG化SiNcやPPABと共に担癌マウスを用いる腫瘍イメージング実験を行う。さらに、腫瘍ターゲティング分子を結合させ、腫瘍集積性の向上を目指す。これらの知見を合わせ、本年度内に有望な腫瘍造影剤を開発する。
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