光音響イメージングは、低浸襲性、コストや解像度の観点から病巣の早期発見に役立つ撮像法として注目されているが、これに利用できる有効な造影剤は少ない。本研究では、元素ブロックシアニン系色素を高分子自己集合体内部に集積化させ、これを造影剤として用いる光および光音響腫瘍イメージングを検討した。 多糖類縁高分子に、ポリエチレングリコール(PEG)と、元素ブロック近赤外色素インドシアニングリーン(ICG)を結合させ、造影剤を得た。この造影剤は、水中で大小の二種類の自己集合体を形成したが、ここに超音波を照射すると、粒径のそろった自己集合体のみが選択的に得られた。様々な粒径の造影剤を用いて腫瘍イメージングを行うことで、粒子の大きさが腫瘍集積性や血中滞留性に大きな影響を与えることを明らかにした。 ヒアルロン酸にICGおよびPEGを結合させ、造影剤を合成した。これが形成する自己集合体内部では、色素を集積化するため、蛍光発光が抑えられ、光音響信号が放出されることを見出した。開発した造影剤は投与量の最大15%程度腫瘍に集積することを明らかにした。また、光音響イメージングを用いることで、腫瘍をコントラスト良く可視化することに成功した。 領域内共同研究により、ジピロメテン系色素を高分子と連結させた造影剤を開発した。この造影剤は効果的に光音響信号を発することを明らかにした。 このように本課題では、研究期間内に元素ブロック近赤外色素を集積化した自己集合体の形成とこれらを用いる光および光音響腫瘍造影剤の開発に成功した。特にヒアルロン酸を母体とする造影剤は、臨床応用、上市を視野に、標準投与量試験、毒性試験などを検討中であり、元素ブロック高分子材料の医療領域における有用性を示す大きな成果であると言える。
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