研究領域 | 元素ブロック高分子材料の創出 |
研究課題/領域番号 |
25102528
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山口 浩靖 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00314352)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 金属イオン / 金属錯体 / 自己集積 / 接着 / 触媒活性 / 塩化ルテニウム / ポリアクリルアミド / ヒドロゲル |
研究概要 |
本年度は金属イオンあるいは金属錯体を介したゲルの自己集積を検討するために以下の2つの方法論で高分子材料の集積ならびに機能化を行った。 (i) 金属塩を含む水溶液を浸漬したポリアクリルアミド(pAAm)ゲルが、金属塩を含まないpAAmゲルと接着する現象を見出した。この接着現象に関与する因子の探求を行った。RuCl3水溶液に浸漬したpAAmゲルと金属塩を含まないpAAmゲルは強く接着し、接着したゲルを水中で振とうしても解離しなかった。これに対し、CrCl3、FeSO4、CoCl2、Ni(NO3)2、あるいはCuSO4の各水溶液を用いた系ではpAAmゲルは接着しなかった。この現象は高濃度のRuCl3存在下で見られる現象であることがわかった。RuCl3水溶液を用いても、同一条件下ではカチオン性ゲルもしくはアニオン性ゲルは接着しないことがわかった。このことから、RuCl3水溶液浸漬によるゲル接着現象が、静電相互作用以外の分子間相互作用に由来する可能性が高いと考えられる。また、RuCl3と直鎖状pAAmを水中で混合すると凝集体形成が見られた。 (ii) ヘム酵素の一つである西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)から補因子を抜き出したapoHRPと補因子である鉄ポルフィリン(FePor)をそれぞれ導入したアクリルアミドゲルを合成した。これらのゲルが互いに接着することで触媒機能が発現する新しいシステムを構築することに成功した。apoHRPゲルとFePorゲルを接着させると、HPRの基質の一種であるピロガロールの酸化反応が促進された。この酸化反応の速度はゲル中のapoHRPやFePorの導入量やゲルの接着表面積に比例した。反応中にゲルを解離させたり接着させたりすることで、触媒反応の速度を制御できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2つの研究方法において予想しなかった現象、あるいは優れた機能を見出すことができた。金属塩の水溶液をポリアクリルアミドゲルに添加した系では、金属イオンの配位子として用いられる有機分子をゲルに導入しなくても、一般的なヒドロゲルを接着させることに成功した。この反応が塩化ルテニウムの場合のみで起こった。アポタンパク質と補因子を導入したシステムでは、2つのヒドロゲルを接着させるだけで触媒反応が起こることを見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
無機イオンを介したゲルの自己集積 配位子が2つ以上配位可能な無機イオン(4 配位や6 配位型錯体となるもの)を添加するとゲルが集積・接着するような機能化ヒドロゲルシステムを構築する。そのゲルには単座配位子、2 座配位子、3 座配位子を導入する。水で膨潤したゲルを一辺5 mm 程の立方体に切り出し、ゲルを金属イオンを含む水溶液に入れ、ゲル間の接着挙動を観察する。このとき、ゲル表面の配位子密度と金属イオン濃度の比率がゲル接着に重要な因子になると予想される。ゲルに導入する配位子ユニット含有量と金属イオン濃度を可変させながら、注意深く観察する。金属イオンと配位子との錯体形成安定度(錯生成定数)は、予め架橋剤を加えないで重合した配位子含有線状ポリマーと金属イオンを混合したときのNMR シグナルのシフト量をもとに定量化する。この錯生成定数に応じてゲル間の接着力が増大するか否かを観測する。配位子含有ゲルが金属イオン(様々な金属の2 価イオンやCu の1 価)存在下で接着した場合、接着したゲルの力学特性を評価するためにレオメーターを用いた応力ひずみ測定を行う。有機溶媒中で膨潤するゲルも合成し、金属イオン添加により発現される機能、特性を評価する。ゲルには異なる2種類の配位子導入することも可能である。1つ目の配位子導入ゲルを合成してから、連続してに2つ目の配位子導入ゲルを合成すると2 種類の界面が融合し、階層制御型自己組織化ゲルが合成できると考えられる。
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