研究領域 | 元素ブロック高分子材料の創出 |
研究課題/領域番号 |
25102529
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
木田 敏之 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20234297)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ナノカプセル / ナノチューブ / 元素ブロック / 一次元融合 / 高分子 / ポリ乳酸 / ポリビニルアルコール |
研究概要 |
ポリビニルアルコール (PVA) 積層膜からなる新規ナノカプセルを作製し、その一次元融合によるナノチューブ形成について検討した。平均粒径300 nmのシリカ粒子をテンプレートに用いて、PVA (Mn = 22000) のNaCl水溶液に15分間浸漬後、アセトニトリル中に浸漬することでPVA膜をシリカ粒子上に定着させ、このプロセスを10回繰り返してPVA積層膜をシリカ粒子上に形成させた。得られた粒子をフッ化水素酸に12時間浸漬してシリカ粒子を除去し、PVAナノカプセルを作製した。得られたナノカプセルの水分散液をPET基板上に滴下し、室温で乾燥させた時はカプセル間の融合がほとんど観察されなかったが、乾燥温度を40 ℃に上げたところ、カプセル間の融合が起こり多くのナノチューブが形成された。乾燥時の温度を上げることでカプセル膜内のPVA分子の運動性が高まり、カプセル間の融合が促進されたと考えられる。また、カプセルの膜厚やPVA水酸基のアセチル化の増加に伴って、カプセル同士の融合によるチューブ形成が起こり易くなることが分かった。また、様々な膜組成からなる高分子カプセル間の一次元融合挙動を利用した‘ブロック型高分子チューブ’の作製について検討するために、今年度はまず、種々の蛍光色素でラベル化したポリ乳酸(PLA)カプセルを作製し、それらの融合挙動について検討した。蛍光ラベル化ポリ-L-リシン(PLL)を組み込んだPLA膜をシリカ粒子上に形成させた後、フッ化水素酸を加えてシリカ粒子を除去し蛍光ラベル化PLAカプセルを作製した。これらの蛍光ラベル化PLAカプセルの水分散液を基板上に滴下し、室温または40 ℃で乾燥させ、生成した構造体の形態を蛍光顕微鏡により観察した。その結果、蛍光ラベル化後もPLAカプセルの一次元融合によるチューブ形成が起こることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究目的である、ポリ乳酸以外の高分子積層膜からなるナノカプセルからの ナノチューブ作製に成功した。高分子積層膜として、ポリビニルアルコール(PVA)積層膜を用い、それからなるナノカプセルを作製した。それらの融合挙動ならびにナノチューブ形成挙動について検討したところ、分子量22000のPVA積層膜からなるナノカプセル(平均粒径=)の水分散液をPET基板上に滴下し、40 ℃で乾燥させることで、ナノカプセル間の一次元融合によるナノチューブが形成されることがわかった。また、カプセルの膜厚やPVA水酸基のアセチル化度の増加に伴って、カプセル同士の融合によるチューブ形成が起こり易くなることも明らかにした。さらに、アセチル化PVA(AcPVA)とPVAの2つの膜成分からなるナノカプセルを作製し、それらの融合挙動を検討したところ、外層にPVA層をもつナノカプセルでは融合が起こらなかったのに対して、外層にAcPVA層をもつナノカプセルでは融合によるチューブ形成が観察された。以上のことから、カプセル同士の融合にはカプセル膜表面のポリマーの運動性が密接に関与していることが明らかとなり、本系におけるナノチューブ形成メカ二ズムを解明する上で重要な知見を得た。 また、様々な膜組成からなる高分子カプセル間の一次元融合挙動を利用した‘ブロック型高分子チューブ’の作製についての検討を行うために、今年度は、種々の蛍光色素でラベル化したポリ乳酸(PLA)カプセルの融合によるナノチューブ形成についても検討した。その結果、蛍光ラベル化ポリ-L-リシン(PLL)をPLA膜に組み込みことで、蛍光ラベル化PLAカプセルの作製に成功し、これらの蛍光ラベル化PLAカプセルからも一次元融合によるチューブ形成が起こることを明らかとした。 以上のことから、当初の計画通り順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた知見をもとに、今後は、膜表面組成の異なるナノカプセル間あるいは異種高分子からなるナノカプセル間の一次元融合を利用したブロック型高分子ナノチューブの作製について検討を行う。膜表面組成の異なるナノカプセルとして、カプセル膜の最外層がポリL-乳酸(PLLA)とポリD-乳酸(PDLA)から構成されている2種のPLAナノカプセルを用いて、これらのナノカプセル間の一次元融合により、ブロック型構造をもつ高分子ナノチューブが形成されるかどうか検討する。ブロック構造を確認するために、異なる蛍光試薬でラベル化したPLLAとPDLAを最外層とするカプセルを作製し、ナノチューブ形成を行う。形成されたチューブの形態はSEMならびにTEMを用いて観察し、ブロック構造は共焦点レーザ顕微鏡を用いて観察する。また、イソタクチックポリメタクリル酸メチル(it-PMMA)とシンジオタクチックポリメタクリル酸メチル(st-PMMA)から構成されている2種のPMMAナノカプセルを用いてのブロック型高分子チューブの作製についても同様に検討を行う。さらに、これまでの研究でナノチューブ形成能が認められた高分子ナノカプセルを用いて、それらの混合分散液を基板上に滴下し所定の温度で溶媒を留去することにより、異種高分子からなるブロック型高分子ナノチューブが形成されるかどうか検討する。
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