公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
本研究では、1分子を機能性ブロックとした1次元階層ナノ構造体へ変換する汎用的手法を開拓することを目的とする。たった一つの加速された原子(イオン)の引き起こす化学反応を利用した本手法の有効性を示すため、有機薄膜太陽電池の材料として欠かせないサッカーボール状分子であるフラーレンをひも状につなぎ合わせ、1次元ナノワイヤーを形成する。このフラーレンナノワイヤーを、効率的に電子を流す電線の芯として有機薄膜太陽電池に応用し、変換効率の向上や安定性の向上を目指す。ポリチオフェン(P3HT)とICBAに適用し、逆デバイス構造の有機薄膜太陽電池を作成したところ、フラーレンナノワイヤーの数密度が10^9 cm^-2、長さが 70 nmの時に、ナノワイヤーなしのデバイスと比べて、約2割の性能向上を実現した。この増加はPCBMを電子輸送層とナノワイヤーとして用いたときよりも、効果が高いことが分かった。
1: 当初の計画以上に進展している
本課題では、研究者らが見出したフラーレンを1次元構造(ナノワイヤー)に変換する汎用的手法を用いて、さまざまな高分子・低分子・無機材料へ適用範囲を探索することを主眼としている。単に構造を作って観察するだけでなく、有機薄膜太陽電池へ適用して変換効率を向上させるという機能開拓も大きな目的としている。本年度では、フラーレン誘導体の一種であるICBAに適応し、太陽電池効率を約2割向上できた点は特筆できる。さらに、これまで通常の低分子はナノ構造体化することができなかったが、それを可能にする分子設計を見出した。したがって、次年度以降、本課題は飛躍的に進展すると期待できる。
色素分子や低バンドギャップポリマーのナノワイヤー化し、P3HT・ICBAのBHJ膜とハイブリッド化して、P3HTが吸収できない長波長領域の光を利用できる有機薄膜太陽電池を作成し、さらなる高効率化を目指す。加えて本手法の特徴は、ナノワイヤーの一端が基板に必ず接合していることによるキャリア輸送経路の確保にある。このナノワイヤー形成技術を使えば、色素分子・低バンドギャップポリマーは“必ず”下の基板と化学的に結合しているため、活性層を塗布しても、それらがドナーあるいはアクセプター相の中で孤立することはない。したがって、本研究の手法では、これらの問題を根本的に解決し、色素増感有機薄膜太陽電池のブレークスルーとなりえる。フラーレンナノワイヤー太陽電池でも観測されたように、高効率化に向けては色素分子の側鎖を適切に設計することと、ナノワイヤー化プロセスでも数密度と長さの最適化が必要であると考えられ、材料の選択と併せて詳細に検討を行う。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 備考 (2件)
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